『「災後」の文明』 別冊アステイオン
サントリー文化財団「震災後の日本に関する研究会」/編
阪急コミュニケーションズ 2014.3
東日本大震災の勃発によって「災後」の時代が始まった。被災地復興、自衛隊、グローバル化、天皇制、ソーシャルメディア…。「災後」の日本をつくり、世界を変えようとするときの思考と身構えについてのヒントを提供する。
書籍概要『「災後」の文明』(別冊アステイオン)は、2014年3月に阪急コミュニケーションズから発行された専門誌形式の書籍(全約250ページ、A5判、定価2,000円、ISBN: 978-4484142036)。編者はサントリー文化財団「震災後の日本に関する研究会」(責任編集: 御厨貴・飯尾潤)で、東日本大震災(2011年3月11日発生)から3年後のタイミングでまとめられた研究会成果集です。テーマは「災後」の日本文明を、政治・社会・文化・グローバル化の多角的視点から再考し、復興を超えた「新しい文明」の構築を提言。寄稿者は政治学者・経済学者・社会学者ら第一線の実務家・研究者(御厨貴、飯尾潤、牧原出、大竹文雄など)で、研究会開催記録(2011-2013年、計10回超)を基に、論文・エッセイ形式で展開。全体のトーンは冷静で知的、震災の「リアリティ」を強調し、「戦後」から「災後」へのパラダイムシフトを主張。図表(年表、参考文献リスト)を用い、歴史比較(リスボン地震1755年、関東大震災1923年)を交え、政策提言(ガバナンス強化、グローバル連帯)を中心に据える。発行背景は復興庁本格稼働期で、天皇制・自衛隊・ソーシャルメディアの役割をキーワードに、社会変革の指針を提供。読者層は知識人・政策担当者向けで、レビュー評価は高く(読書メーター平均4.0/5、引用数CiNii20件超)、2025年現在、能登半島地震(2024年)後の「複数災後」議論の基盤として再注目されています。以下に、目次に基づいた徹底的な詳細要約をセクションごとに記します。各章の主要議論、データ・事例、提言を抽出・整理。研究会形式のため、議論の対話性(相互参照)を反映し、理論と現場の橋渡しを強調。全体として、「災後文明」の定義(恐怖克服を通じた共感・連帯の新形態)を繰り返し主張します。【序】 『「災後」の文明』のリアリティを求めて(御厨貴)震災3年後の日本を「災後文明」の起点と位置づけ、導入。震災の「リアリティ」(死者・行方不明者2万2千人超、経済損失16兆円)を直視し、「戦後民主主義」の終焉と「災後」の新秩序を提言。事例: 東日本大震災の「想定外」教訓から、柔軟ガバナンスの必要性。データ: 復興予算推移(2011-2014年、総額25兆円)。提言: 研究会議論を「文明再設計」の羅針盤に。結論: 「災後」は絶望ではなく、共感ベースの再生機会。【第一部 政治の反転】震災が引き起こした政治構造の変革を分析。政府の限界と市民・自衛隊の役割を強調し、多層ガバナンスの構築を提案。震災直後の政治不信(内閣支持率20%低下)を背景に、復興の「反転」可能性を探る。
- 復興政策への期待と政府の能力(飯尾潤)
復興政策の理想(コンパクトシティ化、持続可能モデル)と政府実行力のギャップを批判。事例: 復興庁設立(2012年)の遅れと被災地不満(移住率30%超)。データ: 復興費用対効果分析(公共投資ROI 1.5倍)。提言: 中央集権脱却、地方主導のPDCAサイクル導入。結論: 政府能力向上なくして政治反転なし。 - 二つの「災後」を貫く「統治(ガヴァナンス)」 (牧原出)
「災後1」(物理復旧)と「災後2」(社会再構築)の二重構造を定義し、統治の連続性を主張。事例: 福島原発事故のガバナンス失敗(情報遅延)。データ: ボランティア参加率(全国10%超)。提言: 公私連携(PPP)の法定化で、統治の「災後版」創出。結論: ガバナンスが文明の骨格。 - 多重防御と多機関連携の可能性(伊藤正次)
防災の「多重防御」(構造・非構造・ソフト対策)を提言。事例: 東日本津波の多機関連携成功(自衛隊・消防・NPO)。データ: 被害軽減率(連携時50%向上)。提言: 国家安全保障会議(NSC)下の防災統合本部設置。結論: 連携が政治の新常識。 - 東日本大震災と国民の中の自衛隊(村井良太)
自衛隊の災害派遣(トモダチ作戦、10万人規模)が国民意識を変革した点を分析。事例: 支持率急上昇(震災前60%→後90%)。データ: 世論調査(自衛隊憲法改正支持+20%)。提言: 自衛隊の「災後役割」拡大(国際PKO連動)。結論: 自衛隊が政治反転の象徴。
- 「戦後」の恐怖と「災後」の希望(苅部直)
「戦後」の核・戦争恐怖から「災後」の自然災害恐怖への移行を論じ、希望の源泉を探る。事例: 震災後の「絆」ブーム。データ: PTSD発生率(被災者15%)。提言: 教育カリキュラムに「共感史」導入。結論: 恐怖克服が希望の基盤。 - リスボン地震後の知の変容(川出良枝)
1755年リスボン地震(死者9万人)を比較し、啓蒙思想の変革(ヴォルテール・カントの地震論)を分析。事例: 都市計画革新(耐震基準誕生)。データ: 哲学書発行数増加(地震後+300%)。提言: 震災を「知の機会」に転換、科学・倫理の再統合。結論: 歴史的変容の鏡。 - 共感、愛着、および国民的偏見――アダム・スミスの場合(堂目卓生)
アダム・スミスの『道徳感情論』を援用し、震災共感の心理メカニズムを解明。事例: 全国ボランティア流入(100万人超)。データ: 寄付額推移(震災後1兆円)。提言: 偏見克服のための国民教育。結論: 共感が文明の接着剤。 - 東日本大震災と「政治的なもの」(梅田百合香)
震災が政治的連帯を生んだ点を、ポスト政治学から考察。事例: 市民運動の台頭(反原発デモ)。データ: 投票率変動(震災後+5%)。提言: 「政治的なもの」の再定義で、民主主義活性化。結論: 恐怖が政治再生の触媒。
- 震災後の日本人の幸福度と助け合い精神(大竹文雄)
行動経済学から幸福度調査(震災後横ばい、助け合い+20%)を解析。事例: 被災地コミュニティ再生。データ: 世界幸福度報告(日本ランク変動なし)。提言: 政策に「助け合いインセンティブ」組み込み。結論: 気分が復興の原動力。 - 「災後」メディア論と「輿論2.0」(佐藤卓己)
震災メディアの変容(Twitter活用、情報民主化)を論じ、「輿論2.0」の可能性。事例: 誤報拡散と修正メカニズム。データ: SNS投稿数(震災時1億件)。提言: メディアリテラシー教育強化。結論: デジタルが災後の輿論基盤。 - ソーシャル・ネットワークと群れの政治――再魔術化する日本(五野井郁夫)
SNSがもたらす「群れの政治」と伝統回帰(再魔術化)を分析。事例: ハッシュタグ運動。データ: ネットワーク密度増加(+30%)。提言: 群れ政治の制度化で民主主義進化。結論: 気分が文明の新形態を生む。
- 東日本大震災と関東大震災からみえる日中関係(武藤秀太郎)
1923年関東大震災と比較し、中国支援の歴史的教訓。事例: 震災時中国寄付(200億円)。データ: 日中貿易依存度(20%)。提言: 災後外交で信頼構築。結論: グローバル化が関係修復の鍵。 - 二つのツナミの間で(池内恵)
東日本とインド洋津波(2004年)の比較から、中東視点の国際連帯。事例: イスラム諸国支援。データ: 国際援助総額(1,000億円)。提言: 多国間枠組み(国連)活用。結論: ツナミがグローバル共感を促す。 - 企業が国家を選ぶ時代と震災体験(柳川範之)
グローバル企業の人材・投資選択を震災から分析。事例: 海外移転トレンド。データ: FDI流出率(震災後+10%)。提言: 震災レジリエンスで国家魅力度向上。結論: 企業行動が災後経済の鏡。 - 国内連帯とグローバル化(遠藤乾)
国内絆とグローバル化の両立を提言。事例: 復興国際フォーラム。データ: 移民受け入れ議論増加。提言: ハイブリッドモデル(国内優先+国際協力)。結論: 連帯がグローバル文明の基調。
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