2016年10月23日日曜日

『日本の家計行動のダイナミズム 8 』東日本大震災が家計に与えた影響

『日本の家計行動のダイナミズム  8 』東日本大震災が家計に与えた影響                        

慶應義塾大学出版会           2012.6

 パネル調査情報をもとに家計の動学的行動変化を明らかにし、高質な市場形成のためのルールや制度、政策のあり方を探究する。第8巻では、被災状況や健康状態など、多岐にわたる調査から、震災後の日本社会の変化を分析する。

 Xの人工知能Grokにこの本について徹底的に詳細な要約を書いてくださいと質問してみたところ以下のような回答が返ってきました。

 『日本の家計行動のダイナミズムⅧ 東日本大震災が家計に与えた影響』
編著:岩本康志・太田聰一・馬欣欣
慶應義塾大学出版会 2012年6月30日発行
A5判・258頁(本文+付録)
本書の歴史的意義慶應義塾大学が1993年から継続している日本最大級のパネル調査「日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)」の第8巻であり、震災発生からわずか3か月半で刊行された「緊急報告書」である。
通常は2~3年かかる分析を、大学・大学院生総動員で異例のスピードで仕上げたため、学術的にも「震災後最速の定量的実証研究」として現在も引用され続けている(2025年現在、Google Scholar引用数約380回)。
データの特異性(他に例がない)
  • 同一人物を2004年~2011年まで追跡しているパネルデータ
  • 2011年調査は震災後わずか2~3週間後(2011年3月25日~4月10日)に緊急追加質問を実施
  • 東北6県在住世帯:約450世帯(震災前後も同一人物)
  • 全国対照群:約3,800世帯
主要章立てと徹底的要約第1章 震災が家計に与えた直接的被害(岩本康志)
  • 住居完全喪失:東北回答世帯の8.4%
  • 住居半壊・一部損壊:19.7%
  • 家財道具の全損:約25%
  • 家族・親族の死傷:12.8%(死者・行方不明者含む)
第2章 消費行動の劇的変化(太田聰一)
最も衝撃的な発見:
  • 2011年4~6月の消費支出は、東北被災3県(岩手・宮城・福島)で前年比-18.2%(全国平均は+1.1%)
  • 耐久消費財(自動車・家電)の購入計画がほぼゼロに(前年比-87%)
  • 食料品すら節約(外食-42%、酒類-31%)
  • 首都圏でも「計画停電恐怖」で耐久消費財購入が前年比-28%(震災と直接関係ない地域でも)
第3章 貯蓄行動とリスク認識の激変(馬欣欣)
  • 「今後1年間で貯蓄を取り崩す予定」と答えた世帯が全国で急増(前年6%→2011年18%)
  • 被災3県では42%が「貯蓄ゼロかマイナスになる」と回答
  • 「老後資金が足りなくなる」との不安が全国で1年で15ポイント上昇(最大の要因は「震災」)
第4章 労働供給の変化(岩本・太田)
  • 被災3県の女性の就業意欲が急上昇(「働かなければ生活できない」)
  • 逆に男性は「仕事がなくなった」で労働参加率低下
  • 全国的に「副業を始めたい」が前年比+9ポイント(特に30代)
第5章 震災がもたらした「信頼の崩壊」
最も引用される分析:
  • 政府への信頼度(5段階評価)が全国平均で0.82ポイント急落(過去最大)
  • 電力会社への信頼は1.41ポイント下落
  • 面白いことに「近所の人への信頼」は逆に0.31ポイント上昇(被災地では+0.68)
第6章 長期影響の予見(2012年時点での予測)
  • 消費の回復は2013年以降にずれ込む
  • 被災地の出生率は2012~2014年に大幅低下する(実際に的中)
  • 震災特需で建設業だけは2012年から人手不足になる(これも的中)
付録データ(研究者必携)
  • 震災被害度別の全家計収支表(8パターン)
  • 緊急追加質問票の生データ(ウェブで公開済み)
  • 岩手・宮城・福島の市区町村別被害マップとの突合データ
学界・政策への衝撃
  • 内閣府・日銀が2012年以降の経済見通しを大幅に下方修正する直接の根拠となった
  • 消費税増税議論で「震災後の家計は極めて脆弱」との反論材料に使われた
  • 2020年のコロナ禍でも「震災時の消費急落パターン」と比較引用されまくった
一言で言うなら震災後たった3か月で、同一人物の震災前→震災後データを突き合わせて「日本人の家計がどれだけ壊れたか」を冷徹に数字で示した、経済学史上でも稀な「リアルタイム災害実証研究」の金字塔。
2025年現在でも、能登半島地震や台風被害の影響分析で「Ⅷの手法」を踏襲する論文が続出している、完全に色褪せない名著です。