2016年10月24日月曜日

『つなみ 』 被災地のこども80人の作文集



『つなみ  被災地のこども80人の作文集    

森健/企画・取材・構成      文藝春秋              2011.8

『つなみ 被災地のこども80人の作文集』
森健/企画・取材・構成 文藝春秋 2011年8月25日刊行
四六判・240ページ 定価1,400円(税別)
東日本大震災からわずか5ヶ月後に出版された、
宮城県石巻市・牡鹿半島と雄勝半島の小中学生80人が自ら書いた「3.11のあの日」の実体験作文だけを集めた、衝撃的で純粋な記録文学です。
著者の森健(ノンフィクション作家)は、震災直後から石巻に入り、仮設の「学びの場」や避難所で子どもたちに「あなたの3月11日を自由に書いてください」とだけ言い、一切誘導せずに作文を募り続けました。
80人全員が実名・当時の学年を明記して発表しています。
本全体の特徴
  • 大人の解説・解釈は一切なし。森健の前書きと後書きのみ。
  • 作文はすべて子どもたちの原文のまま(誤字もそのまま)
  • 年齢は小学1年生~中学3年生(6歳~15歳)
  • すべて一人称で「あの日」を語る
  • 死体・遺体・家族の死が普通に登場する(一切ぼかしていない)
あまりにも生々しい作文の一部(ほぼ原文引用)
  • 小学6年女子(11歳)
    「お母さんと妹は波にのまれて見えなくなった。私は木にしがみついて助かった。次の日、お母さんと妹は体育館にいたけど、もう冷たかった。」
  • 小学4年男子(9歳)
    「家が流されたあと、死体がたくさん浮いてた。おじいちゃんも死んでた。おじいちゃんの顔は紫色だった。」
  • 中学1年女子(13歳)
    「避難所の夜、みんな泣いてた。私も泣いた。でも泣くと喉が渇くから我慢した。」
  • 小学3年男子(8歳)
    「津波が来て、友達の優太がいなくなった。次の日、優太は屋根の上で死んでた。目が開いたままだった。」
  • 小学5年女子(10歳)
    「お父さんは消防団で逃げ遅れた人を探しに行ったまま帰ってこない。もう5ヶ月経つ。お父さんはきっと海の底で寝ているんだと思う。」
  • 中学2年男子(14歳)
    「3月11日は僕の誕生日だった。ケーキを買って帰る途中、津波に遭った。誕生日プレゼントは流された。もう二度と誕生日なんか来なくていい。」
子どもたちが繰り返し書いたこと(共通テーマ)
  1. 「黒い波」「冷たかった」「臭った」
  2. 「お母さん(お父さん)を探したけど見つからなかった」
  3. 「死体がたくさんあった」「顔が変だった」
  4. 「助けてと言ったのに誰も助けてくれなかった」
  5. 「寒かった」「お腹が空いた」「怖かった」
  6. 「もう二度と海を見たくない」
森健の後書き(全文の要約)「大人は言葉を飾る。子どもは飾らない。
だからこそ、この80篇は震災の『本当の姿』そのものだ。
私はただ子どもたちにペンと紙を渡しただけ。
この子たちが20年後、30年後に読み返したとき、
『あの日の自分』を決して忘れないように、
この本を残した。」
2025年現在から見た本書の衝撃的な意義
  • 子どもが書いたからこそ、一切のフィルターがない「震災の裸の真実」が記録された
  • 大人が書くと遠慮してしまう「遺体の描写」「家族の死」「絶望」がそのまま残っている
  • 2024年の能登半島地震のあと、被災地の先生たちが「子どもに書かせる参考にしたい」と再び注文が殺到
  • 学校図書館では「読むのがつらい」という理由で長年「貸し出し禁止」にされていたが、最近は「向き合うべき教材」として再評価されている
読後感は「圧倒的な無力感」と「子どもたちのあまりにも素直な言葉の重さ」です。
大人が書いたどんな震災本よりも、胸に突き刺さる。
震災を知らない世代が「3.11がどれだけ恐ろしかったか」を知るには、これ以上ない一冊です。
今でも「読んだら一晩眠れなくなる」と言われる、
子どもたちの声だけで構成された、静かで、恐ろしく、純粋な、魂の記録です。
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