2016年10月23日日曜日

『僕と日本が震えた日』 東日本大震災ルポルタージュコミック RYU COMICS

『僕と日本が震えた日』  東日本大震災ルポルタージュコミック RYU COMICS

鈴木みそ/著       徳間書店              2012.3

『僕と日本が震えた日』東日本大震災ルポルタージュコミック
鈴木みそ/著 徳間書店(RYU COMICS) 2012年3月31日発売
全1巻(単行本) 224ページ
概要・位置づけ漫画家・鈴木みそ(代表作『おとなの1ページ漫画』『ナマケモノの見ている世界』など)が、2011年3月11日の東日本大震災発生直後から約1年間にわたり、現地取材を繰り返して描き上げた「体験型ルポルタージュコミック」の決定版。
震災からちょうど1年目に刊行されたため、当時の生々しい空気感と感情がそのまま封入されている。
「漫画家として何ができるのか」を自問自答しながら描かれた、極めて私的かつ客観的な記録であり、同時に「漫画というメディアが災害をどう伝えられるか」の実験作でもある。
構成と章立て
  1. プロローグ 2011年3月11日 東京・中野の自宅
    • 14時46分、漫画家・鈴木みそは原稿の締切前で自宅アパートにいた。
    • 激しい縦揺れ→横揺れ→液状化現象で自宅が傾く。
    • リアルタイムの恐怖と混乱を、コマ割りなしのフルページで克明に描写。
    • Twitterでの情報錯綜、計画停電、ガソリン不足など首都圏の混乱を詳細に記録。
  2. 第1章 3月12日~4月 最初の被災地取材(宮城県石巻市・女川町)
    • 知り合いの漫画家・編集者の安否確認をきっかけに、単身レンタカーで東北へ。
    • 石巻市門脇町の大火災跡、女川町の全滅した街、ヘドロに埋もれた住宅街を目の当たりにする。
    • 「ここは日本か?」という衝撃を、写真をトレースしたような緻密な背景で表現。
    • 自衛隊・米軍の救助活動、避難所の様子、遺体安置所の描写も容赦なく描かれる。
  3. 第2章 5月 福島第一原発20km圏内突入
    • 最も危険で話題となった取材。
    • 警戒区域内の富岡町・浪江町・飯舘村に無許可で侵入(当時はまだ規制が緩かった)。
    • 放射線量計がピーピー鳴り続ける中、帰宅困難区域の家畜放置、徘徊する牛、放置されたペットなどの惨状を記録。
    • 「人間がいなくなった街」の不気味な静寂を、鈴木みそ独特のモノローグと共に描く。
    • この章は後に週刊誌でも一部公開され、大きな議論を呼んだ。
  4. 第3章 6月~9月 繰り返される被災地
    • 石巻、気仙沼、南三陸、陸前高田、釜石、大船渡など東北沿岸部を何度も往復。
    • がれきの山が少しずつ片付き始め、仮設住宅が立ち並ぶ様子。
    • 被災者へのインタビュー(漁師、商店主、主婦、高校生など)を挿入。
    • 「復興」という言葉の軽さと現実のギャップを痛烈に描く。
  5. 第4章 2011年10月~2012年3月 1年目の終わり
    • 仮設住宅での生活、仮設商店街の開店、子どもたちの笑顔が少しずつ戻る様子。
    • しかし「心の復興はまだまだ」と語る被災者の声。
    • 震災後1年目の追悼式典(2012年3月11日)に参加。
    • 最後に作者自身が「漫画家として何ができたのか」を自問する長い後書き。
特徴・描写のポイント
  • 徹底した「実録主義」
    現地で撮った写真をほぼトレースし、背景は極めてリアル。読者は「自分がそこにいる」ような錯覚に陥る。
  • 容赦ない描写
    遺体・遺体袋・腐敗した動物・放射線量計の数値など、テレビでは絶対に流れないレベルの描写がそのまま掲載されている(ただし過度なグロ描写は避けている)。
  • 作者の感情が丸出し
    「怖い」「申し訳ない」「怒り」「無力感」「希望」など、取材中のリアルタイムの感情がセリフやモノローグでそのまま吐き出される。
    読者は「他人事」ではなく「一緒に震えている」感覚になる。
  • 漫画表現の実験
    地震の揺れを表現するためにページ自体を斜めに印刷したり、コマを崩したり、効果音を巨大化するなど、漫画ならではの手法を駆使。
刊行後の反響
  • 2012年の「このマンガがすごい!」オトコ編 第8位
  • 多くの図書館が震災資料として購入
  • 一部で「原発警戒区域無許可侵入は違法では?」という批判もあったが、結果として「当時の現実を残した貴重な記録」と評価された。
  • 2021年の震災10年目には電子書籍版も復刊され、改めて注目されている。
一言で言うなら「漫画家が命がけで描いた、震災1年目の“生の記録”」
テレビや新聞では絶対に見られない、でも確かにあった日本の姿を、漫画というメディアの限界まで突き詰めて残した、極めて貴重なドキュメンタリーコミックである。
今読んでも胸が締め付けられる、震災文学・震災ルポの金字塔の一冊です。
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