『自衛隊のPTSD対策 』 東日本大震災から学ぶストレスの克服
防衛システム研究所/編纂 内外出版 2012.4
『自衛隊のPTSD対策 東日本大震災から学ぶストレスの克服』防衛システム研究所/編纂
内外出版 2012年4月25日発売
A5判・240ページ 定価2,520円本書の性格と位置づけ東日本大震災で最大約10万7千人を投入した自衛隊が、災害派遣史上最悪の惨事(遺体収容約1万9千体、津波被災地の極限状況)を経験した結果、隊員に顕著に現れた心的外傷後ストレス障害(PTSD)および関連ストレス障害への組織的対応を、初めて公式にまとめた実務書である。
一般向けではなく、自衛隊・消防・警察・医療機関など「大量遺体対応を余儀なくされる組織」向けに書かれた専門書だが、内容の生々しさと具体性から、震災後10年以上経った現在も「自衛隊が実際に何を見て、どう壊れ、どう治したか」の決定版資料として参照され続けている。全体構成と詳細内容第1章 東日本大震災における自衛隊の活動概要
「自衛隊が10万人を投入して得た、血と涙と遺体の重さで書かれたPTSD対策の教科書」
読むのは非常に辛いが、同じ惨事を繰り返さないために必読の一冊である。
内外出版 2012年4月25日発売
A5判・240ページ 定価2,520円本書の性格と位置づけ東日本大震災で最大約10万7千人を投入した自衛隊が、災害派遣史上最悪の惨事(遺体収容約1万9千体、津波被災地の極限状況)を経験した結果、隊員に顕著に現れた心的外傷後ストレス障害(PTSD)および関連ストレス障害への組織的対応を、初めて公式にまとめた実務書である。
一般向けではなく、自衛隊・消防・警察・医療機関など「大量遺体対応を余儀なくされる組織」向けに書かれた専門書だが、内容の生々しさと具体性から、震災後10年以上経った現在も「自衛隊が実際に何を見て、どう壊れ、どう治したか」の決定版資料として参照され続けている。全体構成と詳細内容第1章 東日本大震災における自衛隊の活動概要
- 投入規模:陸10万、海2万、空1万人(延べ160万人/日)
- 遺体収容実数:陸海空合わせて19,227柱(2012年3月末時点)
- 特に過酷だった部隊:第9師団、第44普通科連隊、第22即応機動連隊、陸自化学学校など
- 「1日200体以上を収容し続けた部隊」「遺体が腐敗・液状化し、袋に入らない状況」の実例を写真抜きで詳細記述。
- 調査対象:岩手・宮城・福島で遺体収容に従事した約3,000名
- 主な症状(発症率)
- 悪夢・フラッシュバック 68.4%
- 過剰覚醒(過敏反応) 61.2%
- 感情の麻痺・回避行動 54.7%
- 罪悪感(「もっと早く来れたら救えたのに」) 48.9%
- 自殺念慮の増加(通常の約8倍)
- 特に重症化した事例
・遺体の顔が自分の子どもと重なり、任務放棄した隊員
・遺体袋を閉めるたびに「ごめんなさい」と謝り続ける隊員
・帰庁後、1年間遺体臭が取れないと訴える嗅覚フラッシュバック
- 「遺体収容後の強制休暇制度」(3~5日)
- 「デブリーフィング」の義務化(1任務終了ごとに1時間以上の語り合い)
- 臨床心理士・精神科医の現地派遣(最大時30名)
- 「臭い対策」:ミントタオル、Vicks Vaporub塗布、遺体袋への消臭剤大量投入
- 「遺体に敬意を払う作法」の徹底(遺体を「物」扱いしないよう教育)
- 2011年10月 「災害派遣精神保健管理要領」を完全改訂
- 2012年1月 自衛隊中央病院に「PTSD専門外来」を新設(現在も継続)
- 「ピア・サポート制度」の導入(同じ経験をした先輩隊員が相談相手になる)
- 「家族向け説明会」の全国実施(家族が症状に気づけるように)
- 27歳陸曹 遺体収容後3か月で完全な解離症状→EMDR療法で回復
- 34歳海曹 嗅覚フラッシュバックが1年続き、除隊寸前→嗅覚暴露療法で復帰
- 44歳1尉 極度の罪悪感で自殺未遂→認知処理療法(CPT)で指揮復帰
- 消防・警察・自治体・病院向けに「自衛隊方式」のマニュアル化
- 特に強調されたポイント
- 「英雄視は逆効果」→過度な称賛は罪悪感を増す
- 「語らせろ、ただし強制するな」
- 「臭いと音」への対策が最優先
- 家族を巻き込むことの重要性
- 自衛隊版CISM(重要事件ストレス・デブリーフィング)マニュアル全文
- 災害派遣時用「メンタルヘルスチェックリスト」
- 推奨される薬物療法一覧(2012年時点)
- 自衛隊が「失敗した対策」も正直に書いている(例:「最初は英雄扱いしたら悪化した」「最初はカウンセリングを任意にしたため重症者が続出した」など)
- 遺体収容の過酷さを遠慮なく記述(「手が溶けて指輪が抜けなかった」「子どもを抱いた母親の遺体が一番辛かった」など)
- 組織防衛のためではなく、「次に同じことをする組織が同じ失敗を繰り返さないため」に書かれたという明確な意志
- 自衛隊中央病院PTSD外来のバイブル
- 消防庁・警察庁の災害派遣マニュアル改訂の主要参考文献
- 熊本地震(2016年)、西日本豪雨(2018年)、能登半島地震(2024年)で実際に活用された
- 一般にはほとんど知られていないが、現場を知る専門家の間では「日本で最もリアルなPTSD対策実務書」とされている
「自衛隊が10万人を投入して得た、血と涙と遺体の重さで書かれたPTSD対策の教科書」
読むのは非常に辛いが、同じ惨事を繰り返さないために必読の一冊である。
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