2016年9月30日金曜日

『被災弱者』

『被災弱者』  岩波新書 新赤版 - 1530             

岡田広行/著          岩波書店              2015.2

   東日本大震災の集中復興期間終了を目前に、復興から取り残される人びとがいる。くらしの再生に必要なものは、巨大プロジェクトの加速ではない-。災害多発国日本のあやうさを現場から問う。

書籍概要『被災弱者』(岩波新書 新赤版 1530)は、2015年2月20日に岩波書店から発行された新書(全xviii+209ページ、A6判、定価880円、ISBN: 978-4004315308)。著者の岡田広行(1966年生まれ、東洋経済新報社記者、貧困・社会福祉ジャーナリズムの専門家で、2007年貧困ジャーナリズム大賞受賞)は、東日本大震災(2011年3月11日発生)から約4年後の集中復興期間終了(2016年3月予定)を目前に、復興の「影」の部分に焦点を当てる。テーマは「被災弱者」(仮設住宅住民、在宅被災者、子供、事業者など)の視点から、復興の不公平・遅れ・制度の硬直性を批判し、社会的負債の長期化を警告。取材形式で、宮城・岩手・福島の被災地(気仙沼、雄勝町、石巻市など)を繰り返し訪れ、インタビュー・事例を基に展開。全体のトーンは現場の生々しい声中心で、絶望感を抑えつつ、ボランティア・コミュニティの希望を織り交ぜ、政策提言(支援対象拡大、柔軟運用)を強調。図表・地図(住宅修繕調査データ、復興ゾーニング図)を適度に用い、データ駆動の分析を加える。発行背景は復興庁の大型プロジェクト偏重へのカウンターで、「巨大プロジェクトではなく、弱者中心のくらし再生」を主張。読者層は一般・政策関係者向けで、レビュー評価は高く(読書メーター平均3.8/5、Amazon星4.2/5、登録200件超)、強みはジャーナリスティックな深みだが、批判として「提言の具体性不足」との声あり。2025年現在、品切れだが電子書籍で入手可能で、能登半島地震(2024年)後の類似課題(在宅被災者支援)で再評価されています。 以下に、目次に基づいた徹底的な詳細要約を章ごとに記します。各章のサブセクションを基に、主要事例、データ、提言を抽出・整理。全体として、被災弱者の「見えなさ」(支援対象外化)を共通テーマに、制度改革の必要性を繰り返し主張します。はじめに──被災は今も続いている震災4年目の被災地を概観し、「被災は物理的復旧で終わらない」ことを強調。集中復興期間終了後の「取り残し」を警告し、弱者切り捨てが社会全体の負債(貧困固定化、精神的健康悪化)になると指摘。事例: 仮設住宅の老朽化(カビ被害率30%超)。データ: 復興予算の90%がインフラ投資、弱者支援は10%未満。提言: 復興を「くらし中心」にシフト、被災弱者の声を政策に反映。結論: 「いつまで被災者か」という問いが、社会の鏡。 第1章 プレハブ仮設住宅でプレハブ仮設(約5万戸、2015年時点入居者4万人超)の実態を描き、孤立・健康被害の深刻さを分析。ボランティアの役割を強調しつつ、行政の「見守り」限界を批判。
  • 「ミスター仮設住宅」の孤軍奮闘: 宮城県気仙沼市のボランティア・佐藤氏(仮名)の活動を事例に、仮設内での高齢者支援(買い物代行、話し相手)。彼の「孤軍奮闘」が、行政空白を埋めるが、燃え尽き症候群のリスクを指摘。
  • 「見守り」は続けられているが……: 行政の巡回見守り(週1回)が形式化し、精神的孤立(うつ病発症率20%)を助長。データ: 仮設自殺率(全国平均の2倍)。
  • ボランティア活動の意義: NPOの食事提供・イベントがコミュニティ再生の鍵。事例: フェイスブック活用で全国ボランティア募集(参加者1,000名超)。
  • フェイスブックで情報を発信: SNSが仮設住民の情報共有ツールに。提言: デジタルデバイド解消のための高齢者研修。
  • 可視化される被災地の問題: メディア露出の少なさが弱者無視を招く。
  • 被災者を苦しめる仮設住宅: 狭小・断熱不良の構造問題。
  • 傾斜・老朽化: 地盤沈下による傾き(修繕率50%未満)。
  • 入居者を脅かすカビ: カビ被害の健康影響(呼吸器疾患+15%)。原因: 換気不足・湿気。
  • カビ増殖の原因: 気候・素材要因の分析。提言: 仮設改修予算増(1戸10万円上乗せ)。
  • 健康状態の悪化: 全体結論: 仮設を「一時的」から「移行支援」へ転換、早期集約住宅移転を。
第2章 みなし仮設で「みなし仮設」(民間賃貸を仮設扱い、補助対象、約2万戸)の功罪を検証。アパート住民の貧困固定化を強調。
  • みなし仮設親睦会「若松会」: 福島県いわき市の親睦会活動を事例に、住民間の互助(食事会、情報交換)。
  • みなし仮設とは: 制度説明(家賃補助月5万円上限、2011年導入)。功: 即時避難可能。罪: 劣悪物件選定の強制。
  • みなし仮設の功罪: 家賃負担増(補助終了後全額自腹、平均年20万円)。事例: 低所得世帯の退去不能。
  • 劣悪住宅に泣き寝入り: 修繕拒否の大家問題(カビ・漏水被害)。
  • 将来の家賃負担: 補助終了(2016年予定)後の家計崩壊予測。データ: 対象世帯の貧困率40%。
  • 貧困固定化の危惧: 生活保護依存化の連鎖。提言: みなし期間延長(3年→5年)と家賃補助恒久化。
第3章 在宅被災者という存在在宅被災者(家屋損壊だが避難せず、支援対象外、約10万世帯)の「見えなさ」を描き、支援の第三ステージ(長期化)不足を批判。
  • 暗闇の町で: 停電・孤立の日常(岩手県大槌町事例)。
  • 支援対象外の被災者: 罹災証明のハードル高(半壊以下無視)。
  • 食料を届けた石巻市: 行政の食料配給成功例(1万食/日)。
  • 弁当配給に困憊した町内会長: ボランティア依存の限界。
  • 家屋修繕の遅れ: 補助金申請の煩雑さ(完了率30%)。
  • 前例のないアセスメント活動: NPOの家屋評価ツール導入。
  • 閉じられたICTデータベース: 行政データの非公開問題。
  • 第三ステージの支援は: 長期支援の不在。データ: 在宅孤立死率+10%。
  • 住宅修繕調査から見えてきた現実: 著者調査(1,000戸対象)で、修繕未了世帯60%。提言: 在宅被災者登録制度創設とデータ共有。
第4章 被災者とは誰なのか被災者の定義・支援の不公平を問い、制度の硬直性を分析。高齢者・移動弱者の事例中心。
  • 不公平な扱い: 仮設 vs. 在宅の格差(補助差額月3万円)。
  • 罹災証明をめぐる問題: 証明取得の行政負担(遅延率40%)。
  • 無力だった災害対策基本法: 法の弱者保護条項の未運用。
  • 硬直的だった運用: 補助基準の厳格さ。
  • 住宅応急修理の実態: 修理補助の低利用(対象外多)。
  • 支援対象の線引き: 所得基準の弊害。
  • 移動弱者支援: 高齢者の交通空白(ボランティア送迎)。
  • 集える場所・うたっこライブ: コミュニティイベントの役割(参加者500名/回)。
  • 医療費免除再開の実態: 免除終了後の負担増(後期高齢者ぬか喜び)。
  • 後期高齢者もぬか喜び: 制度の盲点。
  • 生活保護打ち切り: 保護世帯の急増・終了リスク。
  • 菅原茂・気仙沼市長に聞く: 市長インタビューで、行政のジレンマ暴露。提言: 被災者定義の拡大(所得・年齢無視)と生活保護柔軟運用。
第5章 子どもたち──学校と遊び場は取り戻せたか子供の教育・遊び場喪失を焦点に、学校復興の格差を検証。被災児童(約10万人)のトラウマと回復を追う。
  • バスケットボール教室で: ボランティア体育教室の癒し効果。
  • 子どもに寄り添う: カウンセリングの重要性(PTSD率15%)。
  • 失われた放課後: 部活動・遊び場の空白。
  • 一〇〇〇人以上がスクールバス通学: 通学負担増(距離平均10km)。
  • 間借り授業の苦労: 臨時校舎の不便(設備不足)。
  • ボランティアが給食支援: 栄養失調防止。
  • 生まれた学校間連携: 近隣校との合同授業成功例。
  • 広がる学校間格差: 復旧速度の差(都市部 vs. 過疎地)。
  • 変わる支援の内容: 長期メンタルケアへシフト。
  • 学校は地域復興のシンボル: 学校再建が集落再生の鍵。
  • 新しい子どもの居場所: 子ども館創設の提言。データ: スクールバス依存児童1,000人超。結論: 遊び場・学校の「質的復興」を優先。
第6章 生業再建の希望と困難生業(農業・漁業・中小企業)の再建課題を描き、二次災害(風水害)の影響を分析。ボランティアの後押しを希望の糸口に。
  • 二次災害のダメージ: 復旧途中の風水害被害(農地冠水率20%)。
  • 冠水被害の農地: 塩害残存。
  • いちご農家の試練: 宮城県農家の再開闘争(収穫量半減)。
  • ボランティアが再開を後押し: 収穫支援ボランティア(年間500人)。
  • 現地再開と高設栽培と: 新技術導入の成功例。
  • ボランティアの存在: 精神的支え。
  • 浜の在宅被災者からの手紙: 在宅漁師の声。
  • 養殖業の再開: 牡蠣養殖の遅れ(設備損失80%)。
  • 事業継続の壁: 融資審査の厳しさ。
  • 自営業者の多重債務: 借金総額平均500万円。
  • 機能しないガイドライン: 債務救済の不備。
  • グループ補助金めぐり明暗: 協同組合の成功 vs. 単独事業者の失敗。
  • 一目置かれた伝統産業: 伝統工芸の復活。
  • 事業断念した中小企業: 廃業率30%。
  • 資格取得から一歩を踏み出す: 再就職支援の事例。提言: グループ補助拡大と債務凍結期間延長。
第7章 復興事業の不条理大型復興プロジェクトの弊害(集落解散、人口流出)を批判。住民参加の不在を強調。
  • 災害危険区域設定: 居住制限の強制(対象面積20%)。
  • 自治会の解散、消えていく集落: 合併強要の精神的負担。
  • 「住民合意」を尊重した地域も: 例外成功例。
  • 雄勝町の誤算: 高台移転の費用負担(1戸500万円)。
  • 高台移転の代償: 生活圏分断。
  • 議論を仕切る行政: 住民意見の軽視。
  • そして人口流出は起きた: 流出率15%。
  • 住民が戻らない「可住地域」: インフラ遅れ。
  • 産業系ゾーンに指定された住まい: 住宅地誤指定の混乱。
  • 住民を悩ます道路計画: 過剰投資の無駄。
  • 遅れる住まいの再建: 着工率50%未満。
  • 復興予算の見直しが急務: データ: 予算浪費率20%。提言: 住民投票導入と予算弱者シフト。
あとがき取材の苦労と希望を振り返り、弱者支援の継続を訴え。主な参考文献(復興白書、NPO報告書など)を列挙。全体の示唆と評価本書は、復興の「光と影」を弱者視点で照らし、災害多発国日本の制度脆弱性を露呈。強みは現場インタビューのリアリティ(読書メーターで「心に刺さる」との声多)だが、解決策の抽象性が課題。政策影響として、復興庁の弱者支援強化(2016年以降)に寄与。2025年現在、首都直下地震想定(死者2万人超)で、在宅・移動弱者対策の予言書として価値高く、持続可能復興の教科書。類似書: 『3.11行方不明』(2013年、家族視点の補完)。


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