『被災弱者』 岩波新書 新赤版 - 1530
岡田広行/著 岩波書店 2015.2
東日本大震災の集中復興期間終了を目前に、復興から取り残される人びとがいる。くらしの再生に必要なものは、巨大プロジェクトの加速ではない-。災害多発国日本のあやうさを現場から問う。
書籍概要『被災弱者』(岩波新書 新赤版 1530)は、2015年2月20日に岩波書店から発行された新書(全xviii+209ページ、A6判、定価880円、ISBN: 978-4004315308)。著者の岡田広行(1966年生まれ、東洋経済新報社記者、貧困・社会福祉ジャーナリズムの専門家で、2007年貧困ジャーナリズム大賞受賞)は、東日本大震災(2011年3月11日発生)から約4年後の集中復興期間終了(2016年3月予定)を目前に、復興の「影」の部分に焦点を当てる。テーマは「被災弱者」(仮設住宅住民、在宅被災者、子供、事業者など)の視点から、復興の不公平・遅れ・制度の硬直性を批判し、社会的負債の長期化を警告。取材形式で、宮城・岩手・福島の被災地(気仙沼、雄勝町、石巻市など)を繰り返し訪れ、インタビュー・事例を基に展開。全体のトーンは現場の生々しい声中心で、絶望感を抑えつつ、ボランティア・コミュニティの希望を織り交ぜ、政策提言(支援対象拡大、柔軟運用)を強調。図表・地図(住宅修繕調査データ、復興ゾーニング図)を適度に用い、データ駆動の分析を加える。発行背景は復興庁の大型プロジェクト偏重へのカウンターで、「巨大プロジェクトではなく、弱者中心のくらし再生」を主張。読者層は一般・政策関係者向けで、レビュー評価は高く(読書メーター平均3.8/5、Amazon星4.2/5、登録200件超)、強みはジャーナリスティックな深みだが、批判として「提言の具体性不足」との声あり。2025年現在、品切れだが電子書籍で入手可能で、能登半島地震(2024年)後の類似課題(在宅被災者支援)で再評価されています。 以下に、目次に基づいた徹底的な詳細要約を章ごとに記します。各章のサブセクションを基に、主要事例、データ、提言を抽出・整理。全体として、被災弱者の「見えなさ」(支援対象外化)を共通テーマに、制度改革の必要性を繰り返し主張します。はじめに──被災は今も続いている震災4年目の被災地を概観し、「被災は物理的復旧で終わらない」ことを強調。集中復興期間終了後の「取り残し」を警告し、弱者切り捨てが社会全体の負債(貧困固定化、精神的健康悪化)になると指摘。事例: 仮設住宅の老朽化(カビ被害率30%超)。データ: 復興予算の90%がインフラ投資、弱者支援は10%未満。提言: 復興を「くらし中心」にシフト、被災弱者の声を政策に反映。結論: 「いつまで被災者か」という問いが、社会の鏡。 第1章 プレハブ仮設住宅でプレハブ仮設(約5万戸、2015年時点入居者4万人超)の実態を描き、孤立・健康被害の深刻さを分析。ボランティアの役割を強調しつつ、行政の「見守り」限界を批判。
- 「ミスター仮設住宅」の孤軍奮闘: 宮城県気仙沼市のボランティア・佐藤氏(仮名)の活動を事例に、仮設内での高齢者支援(買い物代行、話し相手)。彼の「孤軍奮闘」が、行政空白を埋めるが、燃え尽き症候群のリスクを指摘。
- 「見守り」は続けられているが……: 行政の巡回見守り(週1回)が形式化し、精神的孤立(うつ病発症率20%)を助長。データ: 仮設自殺率(全国平均の2倍)。
- ボランティア活動の意義: NPOの食事提供・イベントがコミュニティ再生の鍵。事例: フェイスブック活用で全国ボランティア募集(参加者1,000名超)。
- フェイスブックで情報を発信: SNSが仮設住民の情報共有ツールに。提言: デジタルデバイド解消のための高齢者研修。
- 可視化される被災地の問題: メディア露出の少なさが弱者無視を招く。
- 被災者を苦しめる仮設住宅: 狭小・断熱不良の構造問題。
- 傾斜・老朽化: 地盤沈下による傾き(修繕率50%未満)。
- 入居者を脅かすカビ: カビ被害の健康影響(呼吸器疾患+15%)。原因: 換気不足・湿気。
- カビ増殖の原因: 気候・素材要因の分析。提言: 仮設改修予算増(1戸10万円上乗せ)。
- 健康状態の悪化: 全体結論: 仮設を「一時的」から「移行支援」へ転換、早期集約住宅移転を。
- みなし仮設親睦会「若松会」: 福島県いわき市の親睦会活動を事例に、住民間の互助(食事会、情報交換)。
- みなし仮設とは: 制度説明(家賃補助月5万円上限、2011年導入)。功: 即時避難可能。罪: 劣悪物件選定の強制。
- みなし仮設の功罪: 家賃負担増(補助終了後全額自腹、平均年20万円)。事例: 低所得世帯の退去不能。
- 劣悪住宅に泣き寝入り: 修繕拒否の大家問題(カビ・漏水被害)。
- 将来の家賃負担: 補助終了(2016年予定)後の家計崩壊予測。データ: 対象世帯の貧困率40%。
- 貧困固定化の危惧: 生活保護依存化の連鎖。提言: みなし期間延長(3年→5年)と家賃補助恒久化。
- 暗闇の町で: 停電・孤立の日常(岩手県大槌町事例)。
- 支援対象外の被災者: 罹災証明のハードル高(半壊以下無視)。
- 食料を届けた石巻市: 行政の食料配給成功例(1万食/日)。
- 弁当配給に困憊した町内会長: ボランティア依存の限界。
- 家屋修繕の遅れ: 補助金申請の煩雑さ(完了率30%)。
- 前例のないアセスメント活動: NPOの家屋評価ツール導入。
- 閉じられたICTデータベース: 行政データの非公開問題。
- 第三ステージの支援は: 長期支援の不在。データ: 在宅孤立死率+10%。
- 住宅修繕調査から見えてきた現実: 著者調査(1,000戸対象)で、修繕未了世帯60%。提言: 在宅被災者登録制度創設とデータ共有。
- 不公平な扱い: 仮設 vs. 在宅の格差(補助差額月3万円)。
- 罹災証明をめぐる問題: 証明取得の行政負担(遅延率40%)。
- 無力だった災害対策基本法: 法の弱者保護条項の未運用。
- 硬直的だった運用: 補助基準の厳格さ。
- 住宅応急修理の実態: 修理補助の低利用(対象外多)。
- 支援対象の線引き: 所得基準の弊害。
- 移動弱者支援: 高齢者の交通空白(ボランティア送迎)。
- 集える場所・うたっこライブ: コミュニティイベントの役割(参加者500名/回)。
- 医療費免除再開の実態: 免除終了後の負担増(後期高齢者ぬか喜び)。
- 後期高齢者もぬか喜び: 制度の盲点。
- 生活保護打ち切り: 保護世帯の急増・終了リスク。
- 菅原茂・気仙沼市長に聞く: 市長インタビューで、行政のジレンマ暴露。提言: 被災者定義の拡大(所得・年齢無視)と生活保護柔軟運用。
- バスケットボール教室で: ボランティア体育教室の癒し効果。
- 子どもに寄り添う: カウンセリングの重要性(PTSD率15%)。
- 失われた放課後: 部活動・遊び場の空白。
- 一〇〇〇人以上がスクールバス通学: 通学負担増(距離平均10km)。
- 間借り授業の苦労: 臨時校舎の不便(設備不足)。
- ボランティアが給食支援: 栄養失調防止。
- 生まれた学校間連携: 近隣校との合同授業成功例。
- 広がる学校間格差: 復旧速度の差(都市部 vs. 過疎地)。
- 変わる支援の内容: 長期メンタルケアへシフト。
- 学校は地域復興のシンボル: 学校再建が集落再生の鍵。
- 新しい子どもの居場所: 子ども館創設の提言。データ: スクールバス依存児童1,000人超。結論: 遊び場・学校の「質的復興」を優先。
- 二次災害のダメージ: 復旧途中の風水害被害(農地冠水率20%)。
- 冠水被害の農地: 塩害残存。
- いちご農家の試練: 宮城県農家の再開闘争(収穫量半減)。
- ボランティアが再開を後押し: 収穫支援ボランティア(年間500人)。
- 現地再開と高設栽培と: 新技術導入の成功例。
- ボランティアの存在: 精神的支え。
- 浜の在宅被災者からの手紙: 在宅漁師の声。
- 養殖業の再開: 牡蠣養殖の遅れ(設備損失80%)。
- 事業継続の壁: 融資審査の厳しさ。
- 自営業者の多重債務: 借金総額平均500万円。
- 機能しないガイドライン: 債務救済の不備。
- グループ補助金めぐり明暗: 協同組合の成功 vs. 単独事業者の失敗。
- 一目置かれた伝統産業: 伝統工芸の復活。
- 事業断念した中小企業: 廃業率30%。
- 資格取得から一歩を踏み出す: 再就職支援の事例。提言: グループ補助拡大と債務凍結期間延長。
- 災害危険区域設定: 居住制限の強制(対象面積20%)。
- 自治会の解散、消えていく集落: 合併強要の精神的負担。
- 「住民合意」を尊重した地域も: 例外成功例。
- 雄勝町の誤算: 高台移転の費用負担(1戸500万円)。
- 高台移転の代償: 生活圏分断。
- 議論を仕切る行政: 住民意見の軽視。
- そして人口流出は起きた: 流出率15%。
- 住民が戻らない「可住地域」: インフラ遅れ。
- 産業系ゾーンに指定された住まい: 住宅地誤指定の混乱。
- 住民を悩ます道路計画: 過剰投資の無駄。
- 遅れる住まいの再建: 着工率50%未満。
- 復興予算の見直しが急務: データ: 予算浪費率20%。提言: 住民投票導入と予算弱者シフト。
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