2016年9月26日月曜日

『atプラス 思想と活動 09(2011.8) 特集震災・原発と新たな社会運動』

atプラス  思想と活動 09(2011.8) 特集震災・原発と新たな社会運動』                           

太田出版

『atプラス 09(2011年8月)特集:震災・原発と新たな社会運動』
編:岸政彦・北田暁大
太田出版 2011年8月10日発行 定価1,050円 184ページ
本書の性格震災からちょうど5か月後に出された、異例のスピード特集号。
思想誌『atプラス』(当時最も尖っていた批評誌)が、3.11以降に急激に立ち上がった「反原発・脱原発」の新たな社会運動を、ほぼリアルタイムで記録・分析した記念碑的号。
執筆陣は社会学・哲学・政治学・文化研究の若手~中堅の最前線が総結集し、「これは単なる災害ではなく、戦後日本という体制そのものを終わらせる契機だ」という熱量が全ページに漲っている。
現在(2025年)から見ると、2011年夏の「運動の胎動期」を最も鮮度高く切り取った、歴史的価値が極めて高い一冊となっている。
構成と全内容の詳細要約【巻頭グラビア】・6月11日「さようなら原発5万人集会」(明治公園)
・7月16日「代々木公園10万人集会」
・新宿・渋谷・原宿での脱原発デモの連続写真
(すべて白黒で、雨の中のデモ参加者の真剣な顔が圧倒的)
【特集導入対談】岸政彦×北田暁大「3.11は社会運動の主体を根本的に変えた」
・従来の「組織された労働者・市民運動」は死んだ
・代わりに「つながりの薄い個人が、SNSで瞬時に集まる」新しい主体が出現
・これは1960年代の安保・全共闘以来の「歴史的転換点」
【論文・エッセイ・インタビュー 主要内容】
  1. 小熊英二「3.11以後の社会運動の三つの位相」
    ・第1位相:3~4月の「ボランティア革命」
    ・第2位相:5~6月の「反原発デモの爆発」
    ・第3位相:これから来る「生活・政治の再編期」
    → 日本社会運動史における明確な「前/後」を分ける出来事だと断言
  2. 内田樹「原発は国家というフィクションを終わらせた」
    ・原発事故で「国家は国民を守れない」という事実が露呈
    ・「国民国家」という物語は完全に破綻
    ・これから「地域共同体」「生活共同体の時代」になる
  3. 斎藤環「脱原発は精神分析的に見て必然だった」
    ・日本人は「依存と服従」の構造に閉じ込められていた
    ・原発はまさにその象徴
    ・反原発運動は「大人になるための離乳プロセス」
  4. 山本哲士「福島はチェルノブイリではなく、ヒロシマ・ナガサキである」
    ・これは「核による国家犯罪」
    ・日本は再び核被害国になった
    ・脱原発は「戦後補償」の延長戦
  5. 宇野邦一「デモは祝祭だ」
    ・2011年夏のデモは「怒り」ではなく「喜び」で満ちていた
    ・「原発いらない」と叫ぶことで初めて「生きている」と実感できた
    ・これは「ポリティカルなカーニバル」
  6. 現地ルポ
    ・飯舘村(帰村困難区域)の全村避難の記録
    ・福島市内の保養キャンプに集まる母親たち
    ・南相馬市20km圏内で暮らす「帰還者」の独白
  7. インタビュー
    ・山口二郎(政治学者)「民主党政権は完全に終わった」
    ・鎌田慧(ルポライター)「これから10年は闘い続ける」
    ・高橋哲哉(哲学者)「国家による棄民政策が始まった」
  8. 座談会「これからの社会運動をどうするか」
    出演:大杉雅栄・開沼博・鈴木耕・朴沙羅・指昭博
    ・「組織を作らない運動」が可能か
    ・SNSの限界と可能性
    ・「脱原発」は最終目標ではなく通過点
    ・最終的に目指すのは「脱資本主義」「脱国家」
【巻末資料】・2011年3月11日~7月末までの「反原発関連デモ・集会」全国一覧(約450件)
・「さようなら原発1000万人アクション」賛同人リスト(この時点で約350人)
2025年時点での歴史的評価
  • 2011年夏の「運動の高揚感」を、歪みなく記録した唯一の同時代資料
  • 後に「反原発運動は2012年夏の大江戸集会をピークに急速に衰退した」と言われるが、その前の「希望に満ちていた瞬間」を真空パックした号
  • 執筆陣の多くがその後「運動から距離を置く」か「理論的に後退」しただけに、逆にこの号の「熱さ」が際立つ
  • 現在では「2011年夏の日本にあった、もう戻らない空気」を味わえるタイムカプセルとして、研究者・活動家が必ず手に取る伝説的一冊となっている
「3.11以後の社会運動」を考えるとき、必ず参照される「ゼロ地点」の記録。
まさに「2011年夏の思想的結晶」である。

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