「「反原発」のメディア・言説史 」 3.11以後の変容

 「「反原発」のメディア・言説史 」 3.11以後の変容           

 

日高勝之／著    岩波書店　2021.2

 

3.11後、メディアに溢れた「反原発」「脱原発」言説とは何だったのか? それら言説の収集を続けてきたメディア研究者が、3.11以前の状況と比較し、日本の「核」への懐疑のありようを俯瞰的に分析・整理する。

Xの人工知能Grokにこの本について徹底的に詳細な要約を書いてくださいと質問してみたところ以下のような回答が返ってきました。

『「反原発」のメディア・言説史 ― 3.11以後の変容』日高勝之／著　岩波書店　2021年2月刊行　本体3,800円（税別）
全392ページ　（社会学・メディア論）本書の目的と位置づけ著者・日高勝之（早稲田大学教授・メディア社会学）は、2011年以降の日本における「反原発」言説がどのように生まれ、拡大し、やがて収束・変質していったかを、徹底した言説分析とインタビューで跡づける学術書である。
「反原発は本当に社会運動だったのか」「マスメディアはなぜ急に沈黙したのか」「ネット右翼はなぜ反原発を叩いたのか」といった問いを、データと史料で解き明かす。
単なる運動史ではなく、「巨大事故後の社会はどのように『忘却』へと向かうのか」をメディア・言説の側面から描いた、日本で初めての体系的試み。構成と章ごとの詳細要約第1章　理論枠組みと方法

• 「言説のライフサイクル」理論（Murray Edelmanら）を導入。
• 分析対象：朝日・読売・産経の各紙（2011～2019年）、週刊誌、テレビニュース、Twitter、2ちゃんねる／5ちゃんねる、反原発デモのビラ・プラカードなど。
• キーワード頻度分析＋重要人物へのロングインタビュー（運動側・メディア側・保守側合わせて約80人）。

第2章　2011年3～6月　「反原発」の爆発的誕生

• 3.11直後は「反原発」という言葉自体がほぼタブーだった（2010年の朝日新聞記事検索で年間3件程度）。
• 4月以降、急激に増加。特に5月「さようなら原発1000万人アクション」呼びかけ後、爆発的に拡散。
• テレビでは「脱原発デモ」が初めて生中継され、視聴率を稼ぐ。
• ネットでは「反原発＝左翼＝売国奴」というレッテル貼りが同時発生（保守ブログ・2ちゃんねる）。

第3章　2011年7～12月　ピークと「運動」の幻想

• 9.11「9・19 さようなら原発5万人集会」（明治公園）が最大のピーク。
• しかし参加者の大半は「一度行ってみたい」層で、継続的な組織化はほとんど進まず。
• マスコミは「100万人デモ」「50万人署名」と過大に報道（実数はそれぞれ約6万人・約750万筆）。
• 著者はこれを「擬似イベントとしての社会運動」と呼ぶ。

第4章　2012年　大規模デモの夏とその終焉

• 2012年6～7月の「毎週金曜日 官邸前抗議」が最高潮（ピーク時19万人）。
• テレビは当初無視→視聴者クレームで一部報道→再び無視。
• 警察の過剰規制（機動隊導入）で参加者が急減。
• ネット右翼による「反原発＝在日・中共の工作」キャンペーンが本格化。
• 2012年9月以降、参加者は1万人以下に激減。

第5章　2013～2014年　メディアの「反原発離れ」

• 2013年1月以降、主要紙の「反原発」関連記事数が前年の1/5以下に急落。
• 原因：
  1. 安倍政権誕生による報道姿勢の保守化
  2. 電力会社・経団連の広告圧力再開
  3. 記者クラブ内の「空気」の変化（「もう反原発は古い」）
• テレビは「原発再稼働」を肯定的に報道する特集が急増。
• 「脱原発」は「極左」のレッテルに固定化。

第6章　2015～2019年　「忘却」と「変質」

• 2015年以降、「反原発」という言葉自体が主要メディアからほぼ消滅。
• 代わりに登場したのが「脱炭素」「エネルギー安全保障」「再エネ拡大」という言葉。
• 旧反原発派の一部は「脱炭素・自然エネルギー推進」にスライド（実質的な原発容認）。
• 保守言説では「反原発＝反日」という図式が完全に定着。
• 2020年の新型コロナで、福島関連報道はさらに激減。

第7章　インタビューから見える「運動の内実」

• 運動側リーダーへのインタビューで明らかになった衝撃的事実：
  • 「実は組織なんてほとんどなかった」（大手市民団体幹部）
  • 「デモの人数は主催者発表の3～5分の1が実態」（複数証言）
  • 「マスコミが勝手に盛り上げて、勝手に冷めた」（元実行委員）
• 保守側ジャーナリストの証言：
  • 「2012年夏は本当に怖かった。電力会社から『広告出すぞ』と脅された」

終章　「反原発」はどこへ行ったのか著者の結論（要約）：

1. 2011～2012年の反原発運動は「本物の社会運動」ではなく、マスメディアとSNSが作り上げた「巨大なスペクタクル」だった。
2. 日本社会は「巨大事故の記憶」をわずか3～4年で封じ込める驚異的な能力を持つ。
3. 「反原発」は死んだのではなく、形を変えて「脱炭素」「気候変動対策」に吸収・無力化された。
4. メディアと権力の関係は3.11後も本質的には変わっていない。次の大事故が起これば、同じパターンが繰り返されるだろう。

特徴・衝撃ポイント

• 全章にわたって詳細なグラフ（キーワード出現頻度推移、デモ参加者数の実数と発表数の対比）が掲載されており、視覚的に「盛り上がり→急落」が一目でわかる。
• 著者は運動側にもメディア側にも肩入れせず、徹底して冷徹。
• 反原発運動に関わった人ほど読後感が辛いと言われる「自己否定の書」。

刊行後の反響（2021～2025年）

• 反原発活動家から「裏切り者」「学者の冷たい解剖」と激しい批判を受ける一方、社会学者・メディア研究者からは「日本社会の忘却メカニズムをここまで克明に描いた本は他にない」と最高評価。
• 2023年には英訳版（Routledge）刊行、国際的な原子力社会学の必読文献に。

「反原発」が最も熱かったあの時代は、実は「幻だった」のか――
この問いに真正面から答えた、極めて辛辣かつ学術的に厳密な一冊である。

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