『こういうこと。 終わらない福島原発事故』
広瀬隆/著 金曜日 2011.07
原発の危険性を指摘し続けてきた広瀬隆が、子どもたちを救うために福島原発で起こっていることを語った、2011年4月の講演を収録。子どもたちを守ろうと立ち上がった福島県のお母さんたちを取材したルポなども掲載。
広瀬隆さんの著作、「こういうこと 終わらない福島原発事故」という本を文京区立図書館で借りて、読んでみました。
広瀬隆さんとは早稲田大学理工学部応用化学科出身の東京都杉並区在住の作家の方です。
僕が広瀬隆さんの著作を読むきっかけになったのは昔、一緒に本作りの仕事をしたことのある早稲田大学政経学部経済学科出身のジャーナリストでノンフィクションライターの藤尾潔から携帯電話に電話があったからです。
藤尾潔から僕の携帯電話に電話があり、
「広瀬隆は原発について何と言っている」
と言ってきたので、広瀬隆さんの著作を読むことになりました。
本の中で、福島原発事故に関連して登場する専門用語に関する注があるので、ニュースを見たり本を読んだりしても、専門用語の意味が分からないこともあると思い(僕も専門用語の意味が分かりません)、専門用語の注を書き出しておきます。
●管理地域
外部放射線による線量が3ヶ月で1.3ミリシーベルトを超えるかまたは空気中の放射性同位元素が4ベクレルを超える恐れのある場所。
●プルトニウム
原子炉内部で燃料に含まれるウランに中性子があたることなどで生成される放射性元素。同位元素がいくつもあるが、代表的なのがプルトニウム239.この物理的半減期は2万年以上と長く、生物学的半減期は骨で50年、肝臓で20年とされるほど、人体に与える影響は大きい。発癌性があり、微量の摂取でも非常に有毒。
●プルトニウム燃料
使用済み核燃料に含まれるプルトニウムは、取り出したものの大量に余っている。これをウランと混ぜてつくった燃料がMOX(Mixed Oxide=混合酸化物)燃料。福島第一原発の3号機はMOX燃料を使っているため、1号機、2号機、4号機とは燃料が違い、危険性が高い。
●プルサーマル
プル(プルトニウム)とサーマル(サーマルリアクター=軽水炉=水を減速材や冷却剤に使用する原子炉)を合わせた造語。使用済みの核燃料から再処理工場で取り出したプルトニウムを、MOX燃料にして原子力発電所で再利用すること。
●ガル
加速度の単位。1秒間に1センチメートルの割合で加速していく状態。ちなみに関東大震災は最大330ガル、阪神淡路大震災は最大900ガル、新潟県中越沖地震は最大2000ガルとされる。
●水素爆発
水素は大気中で爆発下限限度4.2%を超えると爆発する。一般家庭で使っている都市ガスが爆発下限濃度4.7~6.7%で爆発するのと、さほど変わらない。
●沸騰水型
沸騰水型原子炉(Bolling Water Reactor)は原子炉内で燃料の核分裂時に発生する熱を利用して水を加熱し、そこで発生した蒸気で直接タービンを回して電気を発生させる。東京電力、東北電力、中部電力、北陸電力、中国電力、日本原子力発電(東海第二、敦賀1号機)が採用している。一方、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力、日本原子力発電(敦賀2号機)採用している加圧水型(Pressurized Water Reactor=PWR)では、水に圧力をかけて沸騰を抑え、高温・高圧の水を熱交換器に送り、別の水を蒸気にしてタービンを回して発電する。
●ゲージ圧
ゲージとは計測器のこと。完全な真空を圧力ゼロの基準として割った圧力を絶対圧といい、大気圧を圧力ゼロの基準として測った圧力をゲージ圧という。
●冷却剤
燃料棒を冷却するために使用される媒体。日本の商業用原子炉では軽水(一般的な水)が使われているため、冷却水ともいわれる。ただし、「もんじゅ」などの高速増殖炉では溶融金属ナトリウムが使われるほか、重水や二酸化炭素を使用するプラントもある。
●再循環ポンプ
炉心の温度を一定に保つため、冷却水を循環させるように置かれた設備。
●耐震性バックチェック
耐震安全性評価。
●甲状腺癌
甲状腺とは喉ぼとけのすぐ下にある。重さが20グラム前後の臓器。ここから出される甲状腺ホルモンは、新陳代謝に関与するホルモンを分泌する。ホルモンの量が不足したり過剰になったりする病気があるが、ここが癌になったものが甲状腺癌でいくつかのタイプがある。放射性ヨウ素による影響を避けるためにヨード剤が使用される。
●緊急炉心冷却装置(ECCS)
原子炉内の冷却水や減少や、配管の破損によって冷却水が失われたときなどの緊急時に、炉心を冷却するために設けられている設備。
●六ヶ所村再処理工場
青森県上北郡六ヶ所村にある日本原燃の施設。発電のために使われて生成されたプルトニウムと燃え残ったウランを再処理して取り出し、新しい燃料として使えるようにするために建てられ、2006年からアクティブ試験を開始。敷地面積は約380万平方メートル(東京ドームの80倍以上)
●使用済み核燃料
原子炉で使用されたあとに残る放射性廃棄物で、高いレベル放射線を出すために「死の灰」とも呼ばれる。原子炉に隣接したプールに保管される。これを最終的にどこでどのように処分するか解決不能のまま、プルサーマル計画にもとずく再処理(燃料=プルトニウムの再利用)を強引に実施して六ヶ所村再処理工場が運転不能に陥る。
●炉心溶融
炉心には燃料棒があり、核反応が起こる原子炉の中心部分。炉心内で一定の温度保たれないと(適正に冷却されないと)燃料棒が溶ける。これが炉心溶融である。
●メルトダウン
炉心溶融が進むとドロドロに溶けた高熱の燃料が溶け落ちる。この状態をメルトダウンという。さらに、圧力容器の底を貫通して格納容器にまで溶け出した燃料が流れ込む状態をメルトスルーという。
●セシウム
セシウム137、セシウム134などの同位体がある。両者とも、細胞の浸透圧を維持するために活動するカリウムと似た動きをする。体内に取り込まれると全身に分布する。物理的半減期はセシウム137が約30年、セシウム134が約2年。
●ヨウ素
甲状腺ホルモンに含まれる元素で、体内に取り込まれると、ほとんどすべてが甲状腺に集まる。ヨウ素131の物理的半減期は約8日間。
●太平洋プレート
プレートとは、厚さ約100キロメートルの岩盤。日本の周辺には、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートが存在する。
●日本海溝
太平洋沖合約200キロメートルの海底に、海岸線にほぼ並行して存在する海溝。最大深度は8000メートルを超える。
●トリチウム
水素の同位体で三重水素とも呼ばれる。水素は全身に分布しているため、特定の臓器での蓄積より、全身での内部被曝が問題になる。
●放射線
放射性物質が出すアルファ線、ベータ線、ガンマ線の総称(狭義)。アルファ線やベータ線は紙やアルミでも止められるため、外部被曝を防ぐのは容易といえるが、内部被曝では影響が大きい。ガンマ線は透過力が高く、これを止めるには、厚い鉛の板程度は必要になる。
●ベント
ベント(vent)とは排出すること。原子炉本体を収めた圧力容器内部の圧力を下げるために行われる作業。水のフィルターを通して排出することをウェットベントといい、この方法だと放射線の排出量を減らすことができる。一方、フィルターを通さずに排出することをドライベントと呼ぶ。東京電力は3月12~15日にかけて1~3号機でドライベントを実施。
●SPEEDI
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for
Prediction of
Environmental Emergency Doseの頭文字を取ったもの)。以下、文部科学省のWebサイトにおける説明「万一、原子力発電所などで事故が発生した場合、収集したデータおよび通報された放出源情報を基に、風速場、放射性物質の大気中濃度および被ばく線量などの予測計算を行います。これらの結果は、ネットワークを介して文部科学省、経済産業省、原子力安全委員会、関係道府県およびオフサイトセンターに迅速に提供され、防災対策を講じるための重要な情報として活用されます」。だが実際には有効利用されず、強い批判を浴びた。
●シーベルト
放射線が人体に与える影響の度合いを「シーベルト(Sv)」という単位で表現する。放射線の種類やエネルギーの大きさ、放射線を身体の部位などで異なるため、これらを考慮した数値が「○○Sv」と記述される。一般には、1時間あたり(Sv/h)の数値が示されるが、年間被曝量として(Sv/y)と示されることもある。「1マイクロシーベルト」は1000倍すると「1ミリシーベルト」になり、「1ミリシーベルト」を1000倍すると「1シーベルト」になる。たとえば、2000マイクロシーベルトは2ミリシーベルトである。なお、放射性物質が放射線を出す能力をベクレル(Bq)という単位で表現し、各放射線による人体への個別影響を表現する単位の「シーベルト」と区別する。
●内部被爆
ひと口に被爆といっても、体の外側から被爆する外部被爆と、体内に放射線(放射性物質)を取り込んで被爆する内部被爆とがある。被曝量を測定するためにはガイガーカウンターと呼ばれる計測器が必要。外部被爆を測定するためには、ガイガーカウンター、線量計などと呼ばれる計器を使う。一方、内部被爆を測定するためには、ホールディカウンター、全身カウンターなどと呼ばれる計器が必要だが。1台数千万と高価である。
●半減期
半減期には、物理的半減期、生物的半減期、実効半減期がある。一般に、単に「半減期」という場合は。この本文もそうだが、物理的半減期を指す。半減期とは、原子核が崩壊して、それが半分の数になるために必要な期間。一般に半減期というときは「一半減期」を意味するが、このときに、個数も放射線量も半分になる。さらに「二半減期」になると、それらが当初の4分の1になる。
●レベル7
原発などの原子力関連施設で起こった事故を評価する基準として「国際原子力事象評価尺度(International
Nuclear Event Scale=INES)があり、その深刻さを示すレベルが0から7まで決められている。事故当初、経済産業省はレベル4(所外への大きなリスクを伴わない事故)といい加減な発表をしたが、4月12日、レベル7(深刻な事故)に引き上げた。このときの報道発表の文面は次のとおり。「平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一原発の事故・トラブルに対するINES評価について、3月18日以降に得られた情報を踏まえ、レベル7と暫定評価しました」
●モニタリング
監視すること。環境中の放射線量を測定するために、モニタリングポストやモニタリングステーションが設けられている。
●コバルト58
中性子による核反応で生じる。半減期は71日。福島原発の事故により排出したとみられる。
●アメリシウム
ウラン核燃料を原子炉で燃やすうちにできる核生成物。経口摂取で場合の内部被爆の影響が大きい。
●キュリウム
ウラン核燃料を原子炉で燃やすうちにできる核生成物。吸い込むと肺にとどまり、癌を引き起こす可能性がある。
●ヨード剤
ヨウ素剤ともいう。甲状腺に放射性ヨウ素が集まるのをブロックする。ただし、年齢などによって異なる服用量、服用方法を守らなければならないし、副作用もある。
●計画停電
3月14日~28日まで、東京電力管内の地域単位で行われた、強制的な一斉節電施策。その後は実施されず、本当は避けられたのではないかという見方が強い。
●ストロンチウム90
半減期は約29年、カルシウムと似た働きをし、体内に入ると骨の無機質部分に取り込まれ滞留する。
以上です。
福島原発事故に関するニュースや新聞記事、本に出てくる専門用語ですが、僕も意味が良く分からない言葉も多くありました。
福島原発事故を考える際に出てくる専門用語の意味を書き出すことによって、福島原発事故に対してより深い理解を得られると思い、専門用語の意味を書き出しておきました。
本を読んでの感想に代えて、福島原発事故に関して出てくる専門用語の意味を書き出しておきます。
早稲田大学探検部関係者には是非、読んでいただきたい本です。