『原発訴訟が社会を変える』集英社新書 0802
河合弘之/著 集英社 2015.9
バブル期に大型経済事件で名を馳せたビジネス弁護士が、原発訴訟を勝利へと導いた。その法廷戦術や訴訟の舞台裏を初公開。さらに、著者自ら監督・製作した映画「日本と原発」の重要シーンや製作秘話についても解説する。
先日、福島原発告訴団に関わる弁護士の河合弘之氏の著作、「原発訴訟が社会を変える」という本を文京区立図書館で借りて読んでみました。
河合弘之さんのウィキペディアはこちら→河合弘之
先日、福島原発告訴団に関わる弁護士の河合弘之氏の著作、「原発訴訟が社会を変える」という本を文京区立図書館で借りて読んでみました。
河合弘之さんのウィキペディアはこちら→河合弘之
様々な原発に対する法的な訴訟のことが本に書かれていました。
大飯原発差し止め訴訟のことについても書かれていました。
僕がブログを書いている東電刑事裁判になる、福島原発事故に対する刑事訴訟のことについても書かれています。(P147)
刑事告訴は、福島原発事故を起こした当事者である東京電力経営陣や、同電力のデタラメな津波対策を見過ごし、事故を防げなかった原子力安全・保安院や原子力安全委員会の関係者たちを「加害者」であるとして、刑事罰である業務上過失致死傷罪に問うことを目指しているものである。
「刑事告訴」は、被害者自身が「加害者を罰してほしい」と警察や検察に対して求める制度。犯罪の事実を知った第三者が、警察や検察に対して処罰を求める制度もあり、こちらは「刑事告発」になる。
刑事告訴や刑事告発は、裁判所に対して行われるものではなく、「裁判」ではない。告訴状や告発状は、警察署や検察庁に対して提出され、それをどう扱うか判断するのが検察になる。
検察はまず、告訴状や告発状を正式に受理するかどうか決める。検察が告訴状や告発状を受理すると捜査が始まり、捜査は1年以上かかることもある。捜査の結果、証拠が揃い、有罪に出来ると見通しがたって起訴されると、ようやく「裁判」が始まる。
福島原発事故では政府事故調査委員会の行った関係者への事情聴取も検事の方が行っていた。
検察は政府事故調の最終報告書を2012年7月23日に提出。
2012年8月1日に東京電力経営陣らに対する刑事処罰を求め、全国各地の地方検察庁に対して起こされていた刑事告訴や刑事告発を一斉に受理。
福島原発告訴団の集団告訴・告発が行われたのが2012年6月11日で、原発事故後、最も早く行われていた刑事告発はその1年前となる2011年7月に作家の広瀬隆さんとルポライター明石昇二郎さんの二人の手によるものだった。1年以上もの間、刑事告発などは棚晒しにされていた。
こうした事実から浮かび上がってくるのは、「責任追及を目的としていない」政府事故調の聴取に検事を送り込んでいたために、「責任追及が目的」の刑事告訴や刑事告発を受理することが出来なかった。
刑事告訴、刑事告発受理から1年後の2013年9月9日に東京地検は東京電力の経営陣ら全員を不起訴処分とした。
「確かに15.7メートルの津波が来るかもしれないという東電内部の報告はあったが通説ではなかったので、具体的な予見可能性はなかった」との見解だった。
これに対して福島原発告訴団は2013年10月16日に東京検察審査会に対して審査を申し立て。
申し立てを受けた検察審査会は2014年7月23日に「起訴相当」の議決をする。31日に公表された議決書は
「東京電力は平成20年、東日本大震災と同じ規模の15.7メートルの高さの津波を試算していた。地震や津波はいつどこで起きるか具体的に予測するのは不可能で巨大津波の試算がある以上、原発事業者としてはこれが襲来することを想定して対策を取ることが必要だった」
「安全に対するリスクが示されても実際には津波は発生しないだろう。原発は大丈夫だろうという曖昧模糊とした雰囲気が存在したのではないか。こうした態度は本来あるべき姿から大きく逸脱しているし、一般常識からもずれていると言わざるを得ない。原発の安全神話の中にいたからといって責任を免れることはできない」
という内容だった。
これを受けて東京地検は2015年1月22日に勝俣恒久元会長ら3人を二度目の不起訴処分とした。
「想定外の津波で、仮に対策を取っていても事故は防げなかった」との言い分だった。
そして2015年7月31日に、審査を担当していた東京第五検察審査会は勝俣元会長ら3人を「起訴すべきである」との議決を公表。これで東電の旧経営陣3人は強制起訴されることが決まり、福島原発事故の刑事責任がついに裁判の場で争われることになった。
東京第五検察審議会の議決の要点は国の機関である地震調査研究推進本部の「日本海溝沿いにマグニチュード8,2程度の地震は起こりうる」という報告に基づいて東電が社内で算出した「15,7メートルの津波の恐れがある」という報告は無視して良いはずはない、土木学会に再検討を依頼したなら、その再検討期間だけは原発を止めておくべきだった、その再検討期間に事故は起きてしまったのだから、という点にある。
検察審査会の見解が良く分かる本だと思いました。
検察審査会の見解が良く分かる本だと思いました。
先日は「原発訴訟が社会を変える」という本を借りて読んでみたので本を読んでの感想を書いておきます。
早稲田大学探検部関係者には是非、ご一読していただきたい本です。
河合弘之氏制作の映画「日本と再生」 光と風のギガワット作戦はこちら
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