『大飯原発再稼働と脱原発列島 』
中嶌哲演／編 批評社 2013.03
若狭湾を中心にした原発立地阻止運動を、それぞれの運動の中心にいた人物たちが証言。巨大な権力に立ち向かい、傷だらけになりながらも、原発を阻止してきた民衆の苦闘を語る。
Xの人工知能（AI）Grokにこの本の内容の要約を書いてくださいと質問しました。
回答は以下です。
『大飯原発再稼働と脱原発列島』 詳細な要約
書籍概要この本は、2011年の福島第一原子力発電所事故を背景に、2012年夏に再稼働が決定された福井県の大飯原子力発電所（大飯原発）をめぐる議論を軸に、日本各地で繰り広げられた原発建設・再稼働反対運動の歴史を記録した論集です。編者は中嶌哲演（1942年生まれ、福井県小浜市出身の僧侶・活動家）と土井淑平（1941年生まれ、元共同通信社記者・市民活動家）の2人。批評社から2013年3月に刊行され、総ページ数は237ページ。国家・巨大エネルギー産業・マスコミが一体となった「原発推進」の権力構造を批判しつつ、地方の住民や活動家たちが傷を負いながらも原発を阻止してきた「民衆の苦闘」を、証言や記録を通じて描き出しています。本書の核心は、「脱原発列島」というキーワードにあります。福島事故後、日本社会で「脱原発」への機運が高まった中、大飯原発の再稼働は「原発ゼロ」の流れを逆行させる象徴的事件でした。著者たちは、これを「権力が書き残す歴史」に対する「民衆の声」として位置づけ、忘れ去られがちな地方の抵抗運動を後世に伝えることを目的としています。全体のトーンは、客観的な記録性と強い反原発の情熱が融合したもので、読者に「原発は民主主義のプロセスを欠いた強権的な推進だった」という認識を植え付けます。著者・編者紹介
- 中嶌哲演：福井県小浜市生まれ。東京芸術大学美術学部中退後、高野山大学仏教学科を卒業し、明通寺住職となる。学生時代に広島の原爆被爆者と出会った経験から、帰郷後、被爆者援護活動（1968～1994年）に従事。1971年から「原発設置反対小浜市民の会」、1976年から「原発反対福井県民会議」、1993年から「原子力行政を問い直す宗教者の会」に参加。2012年からは「再稼動阻止全国ネットワーク」の共同代表を務め、原発反対運動の第一人者として知られる。本書では、自身の故郷・若狭湾地域の運動経験を基に編纂を主導。
- 土井淑平：鳥取市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、共同通信社に勤務。退職後は市民活動家として活躍。「ウラン残土市民会議」運営委員や「さよなら島根原発ネットワーク」会員を務め、人形峠ウラン残土撤去運動や青谷原発立地阻止運動に深く関与。本書では、中国地方の運動記録を中心に寄稿・編纂。
- 第1章 若狭湾への集中立地と大飯原発の再稼働―小浜原発誘致阻止運動と若狭湾原発反対運動の歴史
本書の導入部として、福井県若狭湾地域の原発集中立地政策を概観。1970年代から関西電力が推進した「原発銀座」化の背景を、国家のエネルギー政策（石油危機後の原子力依存）と地元漁業・農業コミュニティの対立として分析。編者・中嶌哲演の故郷・小浜市での原発誘致阻止運動（1971年開始）を中心に、住民投票やデモ、漁民のストライキなどの具体的な闘いを時系列で記録。福島事故後の2012年大飯3・4号機再稼働決定を「歴史の逆行」として批判し、野田政権の「ストレステスト」導入の欺瞞性を指摘。証言者には地元僧侶や漁師が登場し、「海の恵みを守るための信仰的抵抗」を強調。章末では、若狭湾全体の11基近い原発計画が民衆運動で半減した意義を論じる。この章は本書の基調を定め、権力の「情報操作」（マスコミの原発推進報道）と民衆の「草の根連帯」を対比。 - 第2章 能登の土地・海を守り選挙を闘いぬく―珠洲原発阻止から志賀原発廃炉の闘いへ
石川県能登半島の事例。北陸電力の珠洲原発計画（1980年代）を阻止した運動から、志賀原発（1986年着工、2011年凍結）の廃炉闘争までを追う。選挙戦を軸に、住民が「環境破壊 vs 雇用創出」の二元論を崩すキャンペーンを展開した過程を詳細に記述。証言には、珠洲市議選での原発反対派勝利（1987年）や、福島事故後の志賀廃炉要求デモの記録が含まれる。著者たちは、能登の豊かな海洋資源（カニ漁など）が原発冷却水放出で脅かされた点を強調し、「選挙を通じた民主主義の実践」として評価。章の後半では、大飯再稼働が全国の廃炉運動に与える悪影響を警告。 - 第3章 丹後に原発はいらない！―久美浜原発阻止運動の記録
京都府京丹後市の久美浜原発計画（1970年代後半～1980年代）を焦点に。関西電力の立地攻勢に対し、地元農民・主婦らが結成した「久美浜原発反対協議会」の活動を、ミーティング議事録や署名集めの実例で再現。計画の白紙撤回（1990年代初頭）までを、法的闘争（環境影響評価の不備提訴）と文化イベント（歌や演劇を通じた啓発）の両面から描く。証言者は高齢の元委員長が多く、「子孫への負債を残さない」という世代的視点が強い。福島事故との対比で、「事前阻止の重要性」を強調し、大飯再稼働を「遅すぎた教訓の無視」と糾弾。 - 第4章 ふるさとと子供たちの未来のために―香住原発阻止運動の記録
兵庫県美方郡香住町（現・新温泉町）の事例。1980年代の原発誘致に対し、PTAや婦人会が主導した「子供中心の反対運動」を記録。学校教育を通じた放射能啓発ワークショップや、子供たちの手紙キャンペーンが功を奏し、計画凍結に至った過程を写真・手記で裏付ける。著者・土井淑平の寄稿が目立ち、「家族単位の連帯」が地方運動の強みである点を分析。章末では、福島の避難民体験を引用し、大飯再稼働が「次世代の犠牲」を強いる危険性を論じる。 - 第5章 生存をおびやかす原子力発電所―浜坂原発阻止運動の記録
鳥取県岩美郡浜坂町（現・岩美町）の運動。1970年代の計画に対し、温泉資源と農業を基盤とする地元住民が「生存権侵害」として抵抗。地質学的リスク（活断層の存在）を科学者と連携して訴え、住民説明会の混乱を詳細に記述。阻止成功（1980年代後半）の鍵として、「外部支援ネットワーク」（全国原発反対連絡会）の役割を評価。証言には、漁業組合のボイコット行動が含まれる。大飯再稼働とのつなぎで、「安全神話の崩壊」を繰り返さないための監視体制を提言。 - 第6章 原発を水際で止めた先手必勝の闘い―青谷原発阻止運動の記録
鳥取県八頭郡青谷町（現・八頭町）の事例で、土井淑平の専門分野。1980年代初頭の計画を、着工前に阻止した「予防的運動」を強調。地元有志の事前調査（土壌・水質分析）と、電力会社との交渉記録を基に、「水際での先手」を戦略として分析。成功要因として、近隣自治体との横断的連帯を挙げる。章は、福島事故後の再評価として締めくくり、大飯のような「既存原発の再稼働」が新たな脅威であることを指摘。 - 第7章 脱原発列島のなかでの大飯再稼働―原発ゼロでも日本の電力は足りる
結論章。全国の事例を総括し、脱原発社会の実現可能性をデータで示す。再生可能エネルギー（太陽光・風力）のポテンシャルや、原発ゼロ時の電力供給シミュレーションを引用（例: 省エネと分散型電源で20%以上の余剰）。大飯再稼働の政治的背景（経産省の原子力村メカニズム）を批判し、「脱原発列島」へのロードマップを提案。編者らの共同寄稿で、読者への行動喚起で終わる。
- gontoshi (2020年、読書メーター): 「原発の建設が民主主義とは程遠いプロセスで進められて来たことが分かります。そのような状況の中で原発建設をはね返した人達がいたことを忘れてはいけないと思います。」
- 山河 (2016年、読書メーター): 「政府・電力会社は自己利益のために原発再稼働に躍起である。欧米などは原子力から撤退しているのに日本の政府自民党は国民の生命・財産を守れ！ 大事故が起きてからでは遅いのだ。」
- ステビア (2014年、読書メーター): 「編著者のうちの一人のところにお伺いします。」（講演参加者の感想で、本の内容を直接補完）。
- 全体評価: Amazon・楽天ブックスではレビュー少なく、専門書ゆえのニッチさ。ブクログでは「知らない地方運動がたくさん書かれてあった。電力会社社員の心身分裂も興味深い」との声あり。 批評としては、IWJ（Independent Web Journal）の関連記事で、中嶌氏の講演が「小浜の歴史を反原発の糧に」と高評価。
