『はだしのゲンわたしの遺書』
中沢啓治/著 朝日学生新聞社 2012.12
原爆で父、姉、弟、妹を亡くした青年は、母の死をきっかけに戦争責任と原爆の問題に向き合う…。白内障で漫画家を引退し、肺がんをわずらう「はだしのゲン」の著者が、原爆の怖さと不屈の半生を、実体験をもとに語りつくす。
『はだしのゲン わたしの遺書』(中沢啓治著、朝日学生新聞社、2012年12月刊、ISBN: 978-4-904826-79-9)は、漫画家・中沢啓治(1939-2012)が自身の被爆体験と半生を振り返り、死の直前に執筆した自伝です。広島への原爆投下(1945年8月6日)を6歳で経験し、家族の大半を失った中沢が、代表作『はだしのゲン』(1973-1985年連載)を通じて戦争と核の恐ろしさ、平和の大切さを訴えた思いを総括。「遺書」と銘打たれた本書は、原爆の記憶を次世代に継承し、2011年の福島第一原発事故への憤りも込めた最後のメッセージです。全224ページ、定価1,540円(税込)で、小学校高学年以上を対象に漢字にふりがなを付けた読みやすい構成。『はだしのゲン』の抜粋漫画を挿入し、子どもから大人まで戦争と平和を考える一冊として評価されます。以下、章ごとの詳細な要約を中心に、内容を徹底的に解説します。
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### **本書の概要と背景**
中沢啓治は、広島市生まれの漫画家で、6歳の時に爆心地から1.2キロの地点で被爆し、父、姉、弟、妹を失いました。1966年の母の死(原爆後遺症が影響)を機に『黒い雨にうたれて』(1968年)を描き、1973年から『はだしのゲン』を『週刊少年ジャンプ』で連載。『はだしのゲン』は累計1,000万部以上、24言語に翻訳され、世界的な原爆文学として知られます。本書は、2009年に白内障で漫画家を引退、2010年に肺がんを診断された中沢が、死を目前に「原爆の記憶を残す」使命感で執筆。2012年12月19日に73歳で逝去し、翌日が初版発行日という、まさに「遺書」としての作品です。福島原発事故を背景に、核の危険性と平和への願いを子どもたちに伝える意図が強く、反戦・反核の信念と人間のたくましさが強調されます。
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### **章ごとの詳細な要約**
#### **第1章 地獄なんて生易しいものではない**
- **内容**:1945年8月6日、広島市立神崎国民学校1年生だった中沢(6歳)の被爆体験を克明に描写。朝、校門で同級生の母親と話していると、突然「火の玉のような光」が飛び込み、爆風でコンクリート塀の隙間に吹き飛ばされる。奇跡的に軽傷で済んだが、街は地獄絵図に。全身黒焦げの遺体、ガラス片が刺さった近隣住民、焼けただれた人々の姿を目撃。家に戻ると、父・姉・弟が焼死、母は臨月で出産直後だった。生まれた妹・富子は生き延びたが、母子は極貧生活に突入。『はだしのゲン』の原爆シーンはこの体験が基盤()。[](https://www.asahi.com/articles/ASR4X5401R3XPITB00H.html)
- **ポイント**:被爆の「リアル」を生々しく描写。「地獄なんて生易しい」と繰り返し、原爆の非人道性を強調。漫画の挿絵(『はだしのゲン』抜粋)が視覚的に恐怖を補強。
- **意義**:被爆者の視点から原爆の即時的惨禍を伝え、読者に衝撃を与える導入。
#### **第2章 生きるために**
- **内容**:戦後の極貧生活と被爆者差別の実態。母子家庭で育ち、食べるものもなく、被爆者として「汚染された」と差別される。中沢は小学3年で手塚治虫の『新宝島』に衝撃を受け、漫画家を志す。学校ではいじめや貧困に耐え、母の過労を目の当たりに。看板屋に就職(中学卒業後)し、働きながら漫画を投稿。17-18歳で入選(『地獄剣』)し、夢に一歩近づく()。[](https://www.chugoku-np.co.jp/feature/special/%25E7%2594%259F%25E3%2581%258D%25E3%2581%25A6%25E3%2583%25BB%25E6%25BC%25AB%25E7%2594%25BB%25E3%2580%258C%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E3%2580%258D%25E3%2581%25AE%25E4%25BD%259C%25E8%2580%2585%2520%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB%25E3%2581%2595%25E3%2582%2593%281939%25E5%25B9%25B4%25EF%25BD%259E%29)
- **ポイント**:被爆後の生存者の苦難(飢餓、差別)と、漫画家への情熱が対比。母の支えと貧困生活が『はだしのゲン』の主人公・中岡元の原型に。
- **意義**:被爆者の「生きるたくましさ」を描き、絶望の中での希望を強調。
#### **第3章 漫画家への道**
- **内容**:1961年、22歳で単身上京し、漫画家のアシスタントに。1965年に妻・ミサヨと出会い、結婚。過酷な下積み生活を経て、1966年に母が死去。火葬後、母の骨が原爆後遺症で「灰だけ」だったことに衝撃を受け、原爆漫画を描く決意。『黒い雨にうたれて』(1968年)を発表し、編集者や漫画家から「よくやった!」と評価される(,)。[](https://fujinkoron.jp/articles/-/13384)[](https://www.chugoku-np.co.jp/feature/special/%25E7%2594%259F%25E3%2581%258D%25E3%2581%25A6%25E3%2583%25BB%25E6%25BC%25AB%25E7%2594%25BB%25E3%2580%258C%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E3%2580%258D%25E3%2581%25AE%25E4%25BD%259C%25E8%2580%2585%2520%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB%25E3%2581%2595%25E3%2582%2593%281939%25E5%25B9%25B4%25EF%25BD%259E%29)
- **ポイント**:母の死が原爆漫画の契機。被爆体験を隠していた中沢が、「当事者として描く」使命感に目覚める。
- **意義**:原爆の記憶を漫画で表現する動機を明らかにし、『はだしのゲン』の誕生背景を説明。
#### **第4章 『はだしのゲン』の誕生**
- **内容**:1973年、『週刊少年ジャンプ』で『はだしのゲン』の連載開始。編集長・長野規の支持で連載が実現()。中沢は、主人公・中岡元(ゲン)に自身の分身を投影し、原爆の恐怖と人間のたくましさを描く。連載はオイルショック(1974年)で中断するが、3誌(『少年キング』など)を経て1985年に完結。子どもや教育者から圧倒的支持を受け、24言語に翻訳(,)。[](https://www.weblio.jp/content/%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB)[](https://www.chugoku-np.co.jp/feature/special/%25E7%2594%259F%25E3%2581%258D%25E3%2581%25A6%25E3%2583%25BB%25E6%25BC%25AB%25E7%2594%25BB%25E3%2580%258C%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E3%2580%258D%25E3%2581%25AE%25E4%25BD%259C%25E8%2580%2585%2520%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB%25E3%2581%2595%25E3%2582%2593%281939%25E5%25B9%25B4%25EF%25BD%259E%29)[](https://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic003.html)
- **ポイント**:『はだしのゲン』は、被爆者の怒りと平和への願いを子ども向けに表現。過激な描写(天皇批判など)が議論を呼ぶが、編集部の理解で連載継続()。[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E8%2587%25AA%25E4%25BC%259D-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4876522634)
- **意義**:漫画を通じて原爆の記憶を世界に広め、反戦・反核のシンボルに。
#### **第5章 原爆と向き合う**
- **内容**:漫画家引退(2009年、白内障)と肺がん診断(2010年)後も、講演で原爆と戦争の恐ろしさを訴える。中沢は「戦争は絶対にしちゃいかん。核兵器は特に」と強調()。福島原発事故(2011年)には「唯一の被爆国が教訓を生かせなかった」と憤り、原発と原爆の連続性を批判。原爆の後遺症(母の骨の消失)や被爆者差別の記憶を振り返り、「忘れてはいけない」と訴える()。[](https://www.nhk.or.jp/hiroshima/lreport/article/002/47/)[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3-%25E3%2582%258F%25E3%2581%259F%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E9%2581%25BA%25E6%259B%25B8-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4904826795)
- **ポイント**:福島事故が、原爆の記憶と現代の核問題を結びつける。中沢の「怒りの人」としての姿勢が明確()。[](https://www.nhk.or.jp/hiroshima/lreport/article/002/47/)
- **意義**:原爆と原発の連続性を強調し、核の危険性を次世代に警告。
#### **第6章 未来への遺書**
- **内容**:死を前に、「『はだしのゲン』は私の遺書」と述べ、平和への願いを次世代に託す(,,)。子どもたちに「戦争の愚かさ」「人間のたくましさ」を伝え、核兵器廃絶を願う。広島カープファンとしてのエピソードや、妻・ミサヨとの温かい思い出も挿入。最後に「人類にとって最高の宝は平和」と締めくくる()。[](https://www.asahi.com/asagakuplus/article/asasho/15002632)
- **ポイント**:自伝全体が『はだしのゲン』の精神を凝縮。漫画の抜粋(原爆シーン、生存者の闘い)が、文章を補強。
- **意義**:中沢の人生と信念を総括し、平和教育の重要性を子どもと大人に訴える。
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### **本書の特徴と評価**
- **自伝と漫画の融合**:文章による自伝に『はだしのゲン』の抜粋漫画を挿入し、視覚と文章で原爆の恐怖を伝える。小学校高学年以上向けにふりがな付きで読みやすい()。[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3-%25E3%2582%258F%25E3%2581%259F%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E9%2581%25BA%25E6%259B%25B8-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4904826795)
- **被爆者のリアル**:中沢の体験(黒焦げの遺体、母の骨の消失)は、原爆の非人道性を生々しく描写。読者から「涙が止まらない」「背筋が凍る」との声(,)。[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784904826799)[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E8%2587%25AA%25E4%25BC%259D-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4876522634)
- **現代的意義**:福島原発事故への憤りが、原爆と原発の連続性を浮き彫りに。2024年の日本被団協ノーベル平和賞受賞やウクライナ戦争の核威嚇を背景に、核廃絶のメッセージが共鳴()。[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3-%25E3%2582%258F%25E3%2581%259F%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E9%2581%25BA%25E6%259B%25B8-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4904826795)
- **批判点**:過激な反戦・反天皇発言や、詳細すぎる被爆描写が一部で議論に()。『はだしのゲン自伝』(1987年)の増補改訂版に近く、重複感を指摘する声も()。[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E8%2587%25AA%25E4%25BC%259D-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4876522634)[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E8%2587%25AA%25E4%25BC%259D-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4876522634)
- **読者の声**:Amazonや読書メーターで「子どもにも読ませたい」「原爆のリアルを知った」と高評価。一方で「トラウマになるほど生々しい」との意見も(,)。[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3-%25E3%2582%258F%25E3%2581%259F%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E9%2581%25BA%25E6%259B%25B8-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB-ebook/dp/B011QRUQ04)[](http://something-new.hatenablog.com/entry/barefoot-GEN)
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### **総括**
『はだしのゲン わたしの遺書』は、中沢啓治の被爆体験と漫画家人生を振り返る感動的な自伝であり、原爆の恐ろしさと平和の大切さを次世代に訴える「遺書」です。広島の地獄絵図、被爆者差別の苦しみ、漫画を通じた闘争心を、文章と『はだしのゲン』の抜粋で力強く伝えます。福島原発事故への憤りや、核廃絶への願いは、2024年の日本被団協ノーベル平和賞や核威嚇の文脈で一層響きます。子どもから大人まで、戦争と平和を考える必読書です。
本書は、原爆文学や平和教育に関心のある読者、被爆者の声を学びたい人、『はだしのゲン』ファンに強く推薦されます。ただし、生々しい描写は感受性の強い読者にトラウマを与える可能性があります。購入はAmazon、紀伊國屋書店、Reader Storeなどで可能(1,540円税込)。
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### **参考文献**
- Amazon.co.jp(レビュー、商品情報),,[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3-%25E3%2582%258F%25E3%2581%259F%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E9%2581%25BA%25E6%259B%25B8-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4904826795)[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3-%25E3%2582%258F%25E3%2581%259F%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E9%2581%25BA%25E6%259B%25B8-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB-ebook/dp/B011QRUQ04)[](https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25AF%25E3%2581%25A0%25E3%2581%2597%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E8%2587%25AA%25E4%25BC%259D-%25E4%25B8%25AD%25E6%25B2%25A2-%25E5%2595%2593%25E6%25B2%25BB/dp/4876522634)
- 紀伊國屋書店ウェブストア[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784904826799)
- 朝日新聞(2023年5月17日、連載50年)[](https://www.asahi.com/articles/ASR4X5401R3XPITB00H.html)
- 婦人公論(2024年8月13日、妻ミサヨインタビュー)[](https://fujinkoron.jp/articles/-/13384)
- NHK(2023年1月11日、中沢の思い)[](https://www.nhk.or.jp/hiroshima/lreport/article/002/47/)
- 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター(2012年12月26日)[](https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=8372)
- TBS NEWS DIG(2023年3月4日、自伝「おれは見た」)[](https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/360626)
- X投稿(@genhiroshima、2024年10月18日ほか),,
情報は提供されたウェブ検索結果とX投稿を基に構成し、客観性と正確性を確保。2024年の核問題や平和教育の文脈を強調しました。