2014年7月16日水曜日

『原発と原爆 』「日・米・英」核武装の暗闘

『原発と原爆 』「日・米・英」核武装の暗闘 文春新書 - 873  

有馬哲夫/著   文藝春秋 2012.08


日本の現代史において原発と核武装はどのように結びついていったのか。外交と安全保障に重心を置きつつ、日本側とアメリカ・イギリス側の第一次資料に基づき、原発導入から今日に至るまでの歴史的な流れを追う。

『原発と原爆 「日・米・英」核武装の暗闘』(有馬哲夫著、文春新書、2012年8月刊、ISBN: 978-4-16-660873-7)は、早稲田大学教授で公文書研究者の有馬哲夫が、日米英の機密文書を基に、戦後日本の原子力政策と核武装の可能性をめぐる暗闘を検証したノンフィクションです。本書は、広島への原爆投下(1945年8月6日)を受けた日本が、原発導入を通じて核武装の潜在能力を模索した歴史を、米国と英国の外交政策との緊張関係の中で描きます。東日本大震災と福島第一原発事故(2011年3月11日)を背景に、原発の裏に隠された核兵器開発の意図を浮き彫りにし、日本のエネルギー政策と安全保障の闇に迫ります。以下、章ごとの詳細な要約を中心に、内容を徹底的に解説します。 --- ### **本書の概要と背景** 有馬哲夫(1953年青森県生まれ)は、メディア研究と日米放送史を専門とし、『日本テレビとCIA―発掘された「正力ファイル」』(2006年)などで知られる社会学者です。本書は、米国国立公文書館や英国国立公文書館の機密解除文書を基に、日本が原発を導入した背景に核武装の意図があったことを明らかにします。アイゼンハワー大統領の「Atoms for Peace」(1953年)演説を起点に、日本が英国製コルダーホール型原発(東海発電所)を導入した経緯や、正力松太郎、岸信介、佐藤栄作、田中角栄、中曽根康弘ら政治家の核戦略を検証。福島事故後の2012年に刊行され、原発の「平和利用」が核兵器開発と結びついていた歴史的文脈を、現代のエネルギー政策と安全保障の議論に繋げます。全224ページ、定価808円(税込)。 本書の特徴は、日米英の三国間の外交機密文書を駆使し、日本の原発政策が単なるエネルギー供給ではなく、核武装オプションを維持する戦略だった点を強調する点です。読者からは「戦後史の闇を暴く衝撃作」と評価される一方、科学的な記述の難解さや後半の分析の薄さへの批判もあります。本書は、核抑止論や日本の対米従属を批判的に検討する人々に新たな視点を提供します。 --- ### **章ごとの詳細な要約** #### **第1章 広島に原発を建設?** - **内容**:東日本大震災と福島第一原発事故(2011年3月11日)が、原爆と原発の歴史的連続性を浮き彫りにしたと述べ、戦後日本の原発政策の起源を検証。1950年代、米国はアイゼンハワーの「Atoms for Peace」演説(1953年)を通じて、原発を「平和利用」の名目で推進したが、その裏で核不拡散を目的に他国の原子力研究を監視。米国人科学者ジェームズ・イェーツが「広島に原発を建設する」と提案(1955年)したことは、被爆地への原発設置という皮肉な計画として注目される。米国は、日本が原発導入でプルトニウムを獲得し、核武装する可能性を懸念。国務省の機密メモ(1955年)は、日本から返還されたプルトニウムが米国の核兵器に使用される場合、「広島の記憶を呼び起こし、心理的問題を引き起こす」と警告()。[](https://www.amazon.co.jp/%25E5%258E%259F%25E7%2599%25BA%25E3%2581%25A8%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586-%25E3%2580%258C%25E6%2597%25A5%25E3%2583%25BB%25E7%25B1%25B3%25E3%2583%25BB%25E8%258B%25B1%25E3%2580%258D%25E6%25A0%25B8%25E6%25AD%25A6%25E8%25A3%2585%25E3%2581%25AE%25E6%259A%2597%25E9%2597%2598-%25E6%2596%2587%25E6%2598%25A5%25E6%2596%25B0%25E6%259B%25B8-%25E6%259C%2589%25E9%25A6%25AC-%25E5%2593%25B2%25E5%25A4%25AB/dp/4166608738) - **ポイント**:広島への原発計画は、米国の核不拡散政策と日本の核武装意図の衝突を象徴。原発導入が、単なるエネルギー政策ではなく、安全保障の駆け引きだった。 - **意義**:福島事故を機に、原爆と原発の連続性を再考。日本の原発政策の「闇」を歴史的文脈で明らかに。 #### **第2章 なぜ、日本最初の原発はイギリス製だったか** - **内容**:日本初の商用原発、東海発電所(1966年運転開始)が英国製コルダーホール型だった理由を探る。正力松太郎(読売新聞社主、元CIA協力者)は、原子力基本法(1955年)の成立を主導し、原発を推進。米国は、日本が原発で生産したプルトニウムを核兵器に転用するのを防ぐため、協力協定で「米国提供のウランから生成したプルトニウムを返還」と義務付けた。これに対し、正力と岸信介(当時外相、後に首相)は、プルトニウム確保を目指し、英国からコルダーホール型原発を輸入。英国の報告書(1956年、石川一郎)では、コルダーホール型が「プルトニウム生産を主目的」と明記され、核武装の潜在能力を意図していたことが示唆される()。[](https://www.amazon.co.jp/%25E5%258E%259F%25E7%2599%25BA%25E3%2581%25A8%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586-%25E3%2580%258C%25E6%2597%25A5%25E3%2583%25BB%25E7%25B1%25B3%25E3%2583%25BB%25E8%258B%25B1%25E3%2580%258D%25E6%25A0%25B8%25E6%25AD%25A6%25E8%25A3%2585%25E3%2581%25AE%25E6%259A%2597%25E9%2597%2598-%25E6%2596%2587%25E6%2598%25A5%25E6%2596%25B0%25E6%259B%25B8-%25E6%259C%2589%25E9%25A6%25AC-%25E5%2593%25B2%25E5%25A4%25AB/dp/4166608738) - **ポイント**:正力と岸の「自衛核武装」志向が、米国の核不拡散政策と対立。英国との協力は、米国の監視を回避する戦略だった。 - **意義**:日本初の原発が英国製だった背景に、核武装の意図が潜むことを機密文書で証明。 #### **第3章 東海発電所と核武装** - **内容**:東海発電所の稼働(1966年)と、佐藤栄作(当時首相、元原子力委員長)の核武装政策を検証。佐藤は、1960年代に「核武装の可能性」を研究させ、機密文書で「日本は核兵器を製造する技術的能力がある」と報告。東海発電所は、プルトニウム生産の基盤として、核武装の潜在能力を維持する役割を果たした。米国は、日本が核拡散防止条約(NPT、1970年発効)に署名するまで監視を強化。佐藤は1967年に「非核三原則」(持たず、作らず、持ち込ませず)を表明するが、これは国内の反核世論を抑えるための政治的パフォーマンスだったと分析。 - **ポイント**:佐藤の二面性(非核三原則の表明と核武装の研究)が、米国の圧力と日本の戦略の間で揺れる日本の立場を映す。 - **意義**:東海発電所が、単なる電力供給施設ではなく、核武装オプションの基盤だったことを明らかに。 #### **第4章 ロッキード事件とウラン調達** - **内容**:1970年代の原発建設ラッシュとロッキード事件(1976年)の関連を分析。田中角栄(1972-1974年首相)は、濃縮ウランの大量輸入を決定し、原発拡大を推進。ロッキード事件(米ロッキード社による日本の政治家への贈賄疑惑)は、田中の親米姿勢と原発政策が米国の利益に反したため、米国による「失脚工作」の一環だった可能性を指摘。有馬は、機密文書から、田中のウラン調達が核燃料サイクルの自立と核武装能力の強化を意図していたと推測。ロッキード事件は、米国の核不拡散政策と日本の野心の衝突を象徴()。[](https://blog.goo.ne.jp/chicxulub/e/4206d3350bde0ddb3ca7f1cc2a65f2c6) - **ポイント**:田中の原発政策は、経済成長と核武装能力の両方を目指したが、米国の介入で挫折。ロッキード事件の裏に核の駆け引きがあった。 - **意義**:原発建設ラッシュが、核武装と国際政治の暗闘にどう繋がったかを解明。 #### **第5章 核なき核大国へ** - **内容**:中曽根康弘(1982-1987年首相)の時代に、日本が「核なき核大国」としてプルトニウム保有量を増やす過程を検証。1977年のカーター米大統領の核不拡散政策(プルトニウム再処理の制限)は、日本に影響を与えたが、日本はNPTの「穴」(民生用プルトニウムの保有は許可)を活用し、核燃料サイクルを推進。中曽根は、原発拡大を通じてプルトニウムを蓄積し、核武装の潜在能力を維持。1980年代の高速増殖炉「もんじゅ」計画や青森県六ヶ所村の再処理工場計画も、核武装オプションの延長線上にあると分析。 - **ポイント**:日本は、NPT体制下で核兵器を持たずに核技術大国を目指し、米国との暗闘を続けた。中曽根の戦略は、核抑止論と経済成長の両立。 - **意義**:福島事故前の日本の原発政策が、核武装の潜在能力を維持する戦略だったことを明らかに。 #### **終章 3.11後の日本の選択** - **内容**:福島第一原発事故を、原爆と原発の歴史的連続性の帰結と位置づけ、日本のエネルギー政策と安全保障の未来を展望。事故は、原発の「平和利用」神話の崩壊を示し、核武装オプションの危険性を露呈。有馬は、日本が核武装の野心を捨て、脱原発と非核三原則を真に実践する道を模索すべきと提唱。米国との従属関係を見直し、自主的な安全保障政策を構築する重要性を強調。 - **ポイント**:福島事故は、原発と核武装の暗闘の歴史的帰結。日本は核の誘惑から脱却し、平和主義を再定義する必要がある。 - **意義**:戦後日本の核政策の闇を暴き、3.11後のエネルギー政策と安全保障の再考を促す。 --- ### **本書の特徴と評価** - **機密文書の活用**:米国・英国の外交機密文書(例:国務省メモ、英国報告書)を駆使し、従来知られていなかった日本の核武装意図を明らかに。一次資料の信頼性が強み。 - **衝撃的視点**:広島への原発計画やロッキード事件の核関連の背景など、戦後史の「闇」を暴く視点が読者に衝撃を与える()。[](https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166608737) - **現代的意義**:福島事故後の2012年に刊行され、原発政策の再考を迫る。2024年の日本被団協ノーベル平和賞受賞やウクライナ戦争での核威嚇を背景に、核抑止論の虚構を批判()。[](https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1272-a/) - **批判点**:科学技術の記述が難解で、一般読者にはわかりにくいとの声()。後半(1980年代以降)の分析が薄く、佐藤・田中時代に重点が偏る。文体が硬く、読みにくいとの指摘も。[](https://www.amazon.co.jp/%25E5%258E%259F%25E7%2599%25BA%25E3%2581%25A8%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586-%25E3%2580%258C%25E6%2597%25A5%25E3%2583%25BB%25E7%25B1%25B3%25E3%2583%25BB%25E8%258B%25B1%25E3%2580%258D%25E6%25A0%25B8%25E6%25AD%25A6%25E8%25A3%2585%25E3%2581%25AE%25E6%259A%2597%25E9%2597%2598-%25E6%2596%2587%25E6%2598%25A5%25E6%2596%25B0%25E6%259B%25B8-%25E6%259C%2589%25E9%25A6%25AC-%25E5%2593%25B2%25E5%25A4%25AB/dp/4166608738) - **読者の声**:Amazonレビューでは「戦後史の裏側を知る衝撃作」「核武装の意図に驚愕」と高評価だが、「結論ありき」「科学的説明が不足」との批判も()。[](https://www.amazon.co.jp/%25E5%258E%259F%25E7%2599%25BA%25E3%2581%25A8%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586-%25E3%2580%258C%25E6%2597%25A5%25E3%2583%25BB%25E7%25B1%25B3%25E3%2583%25BB%25E8%258B%25B1%25E3%2580%258D%25E6%25A0%25B8%25E6%25AD%25A6%25E8%25A3%2585%25E3%2581%25AE%25E6%259A%2597%25E9%2597%2598-%25E6%2596%2587%25E6%2598%25A5%25E6%2596%25B0%25E6%259B%25B8-%25E6%259C%2589%25E9%25A6%25AC-%25E5%2593%25B2%25E5%25A4%25AB/dp/4166608738) --- ### **総括** 『原発と原爆 「日・米・英」核武装の暗闘』は、戦後日本の原発政策が核武装オプションと密接に結びついていたことを、米英の機密文書で明らかにした衝撃的なノンフィクションです。有馬哲夫の緻密な調査は、正力松太郎、岸信介、佐藤栄作、田中角栄、中曽根康弘らの核戦略と、米国の核不拡散政策との暗闘を浮き彫りに。広島への原発計画やロッキード事件の裏側など、戦後史の知られざる側面を提示します。福島事故後のエネルギー政策や、2024年の核問題(日本被団協ノーベル賞、核威嚇)を考える上で、原発と核兵器の連続性を再考させる重要作です。 本書は、戦後史、核政策、安全保障に関心のある読者、福島事故後のエネルギー問題を考える人に強く推薦されます。ただし、科学用語や文体の硬さが一般読者にはハードルとなる場合があります。購入はAmazon、楽天ブックス、紀伊國屋書店などで可能(808円税込)。 --- ### **参考文献** - Amazon.co.jp(レビュー、商品情報)[](https://www.amazon.co.jp/%25E5%258E%259F%25E7%2599%25BA%25E3%2581%25A8%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586-%25E3%2580%258C%25E6%2597%25A5%25E3%2583%25BB%25E7%25B1%25B3%25E3%2583%25BB%25E8%258B%25B1%25E3%2580%258D%25E6%25A0%25B8%25E6%25AD%25A6%25E8%25A3%2585%25E3%2581%25AE%25E6%259A%2597%25E9%2597%2598-%25E6%2596%2587%25E6%2598%25A5%25E6%2596%25B0%25E6%259B%25B8-%25E6%259C%2589%25E9%25A6%25AC-%25E5%2593%25B2%25E5%25A4%25AB/dp/4166608738) - 文藝春秋BOOKS(内容紹介)[](https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166608737) - 真似屋南面堂はね~述而不作(ブログ、目次)[](https://blog.goo.ne.jp/chicxulub/e/4206d3350bde0ddb3ca7f1cc2a65f2c6) - 紀伊國屋書店(書評) - X投稿(@uedon1103、2025年6月26日) 情報は提供されたウェブ検索結果とX投稿を基に構成し、客観性と正確性を確保。2024年の核問題や福島事故の文脈を踏まえ、批判的視点で分析しました。
原発と原爆
原発と原爆
著者:有馬哲夫
価格:831円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る