2025年1月3日金曜日

『原爆裁判』アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子

 『原爆裁判』アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子            

 

山我浩/著 毎日ワンズ 2024.6

 

NHK朝の連続テレビドラマ「虎に翼」の主人公のモデルとなった女性弁護士・三淵嘉子は、「原爆裁判」で裁判官として「原爆投下は国際法違反である」とする判決を下した。原爆の開発から投下の歴史と、原爆裁判を深掘りする。

『原爆裁判―アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子』(山我浩著、毎日ワンズ、2024年6月刊)は、日本初の女性裁判官であり、NHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公・寅子のモデルとなった三淵嘉子(1914-1984)が関わった「原爆裁判」を中心に、彼女の人生と原爆投下の歴史的背景を詳細に描いたノンフィクションです。本書は、原爆投下の国際法違反性を初めて法廷で問うた歴史的裁判の意義を深掘りし、現代の核問題にも繋がるその影響を考察しています。以下に、本書の詳細な要約を章ごとに整理し、内容を徹底的に解説します。 --- ### **本書の概要と背景** 本書は、広島と長崎への原爆投下(1945年8月)をめぐる「原爆裁判」(1955年提訴、1963年判決)を軸に、裁判官としてこの訴訟に携わった三淵嘉子の役割と、原爆開発から投下に至るアメリカの行動を検証します。原爆裁判は、被爆者5人が日本政府を相手に損害賠償を求めた国家賠償訴訟で、原爆投下の違法性と戦争犯罪性を正面から問うた世界初の裁判として知られています。本書は、裁判の詳細な経緯、判決文の全文、及び三淵の生涯を収録し、核兵器の使用がもたらす人道的・法的な問題を現代の視点から浮き彫りにします。 著者の山我浩は、元出版社編集長で、歴史や社会問題をテーマにした著作で知られる作家です。本書は、NHK朝ドラ「虎に翼」の人気を受けて、三淵嘉子のあまり知られていない原爆裁判への関与に光を当て、彼女の功績と原爆の歴史的背景を一般読者向けに解説しています。価格は1,540円(税込)、全272ページで、ISBNは978-4-909447-29-6です。[](https://books.rakuten.co.jp/rb/17887521/)[](http://mainichiwanz.com/AAA/AAA_038.html) --- ### **章ごとの詳細な要約** #### **第1章 死の商人と呼ばれた男** この章では、原爆開発の背景とその推進者たちの動機を掘り下げます。中心となるのは、「マンハッタン計画」を主導した科学者や政治家、及びウランやプルトニウムの供給に関わった実業家たちです。特に、ウラン鉱石の入手経緯や、原爆開発におけるアメリカの執念が描かれます。アメリカ政府は、戦争勝利のためなら手段を選ばず、倫理的・人道的な問題を無視して原爆開発を推し進めました。この章では、原爆が単なる兵器ではなく、科学と政治が交錯する「死の技術」として生み出された過程を詳細に記述し、後の裁判での「国際法違反」の議論の基盤を提供します。[](https://www.hmv.co.jp/artist_%25E5%25B1%25B1%25E6%2588%2591%25E6%25B5%25A9_000000000798205/item_%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586%25E8%25A3%2581%25E5%2588%25A4-%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25A1%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25AB%25E3%2581%25AE%25E5%25A4%25A7%25E7%25BD%25AA%25E3%2582%2592%25E8%25A3%2581%25E3%2581%2584%25E3%2581%259F%25E4%25B8%2589%25E6%25B7%25B5%25E5%2598%2589%25E5%25AD%2590_15000454)[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1802355) #### **第2章 原爆が投下された日** 1945年8月6日と9日、広島と長崎に投下された原爆の状況を詳細に描写します。広島への「リトルボーイ」(ウラン型)と長崎への「ファットマン」(プルトニウム型)の投下プロセス、爆発の威力、及び即時的な被害(死者数、破壊規模)を解説。アメリカが原爆投下の候補地を選定する過程で、京都や東京を外し、広島と長崎を選んだ理由も明らかにされます。また、原爆投下直後のアメリカの対応、特に残留放射線の影響を過小評価し、隠蔽した事実が強調されます。この章は、原爆の非人道性を裁判の文脈で理解するための歴史的背景を提供します。[](https://books.rakuten.co.jp/rb/17887521/)[](https://www.hmv.co.jp/artist_%25E5%25B1%25B1%25E6%2588%2591%25E6%25B5%25A9_000000000798205/item_%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586%25E8%25A3%2581%25E5%2588%25A4-%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25A1%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25AB%25E3%2581%25AE%25E5%25A4%25A7%25E7%25BD%25AA%25E3%2582%2592%25E8%25A3%2581%25E3%2581%2584%25E3%2581%259F%25E4%25B8%2589%25E6%25B7%25B5%25E5%2598%2589%25E5%25AD%2590_15000454) #### **第3章 放射線との戦い** 原爆の被害は即時的な爆発だけでなく、残留放射線による長期的な健康被害も深刻でした。この章では、被爆者(ヒバクシャ)が直面した放射線障害の実態、及びアメリカによる放射線被害の隠蔽工作を詳細に検証します。第五福竜丸事件(1954年、ビキニ環礁での水爆実験による被曝)など、原爆・核実験の被害が日本国内でどのように認識され、反核運動の契機となったかを解説。被爆者の苦しみが、後の原爆裁判での原告たちの訴えの中心となったことを示します。[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784909447296) #### **第4章 アメリカはお友達?だが…** 戦後、日米関係は同盟国として強化されましたが、原爆投下の責任問題はタブーとされていました。この章では、日本が1952年のサンフランシスコ平和条約でアメリカに対する賠償請求権を放棄した背景を説明し、被爆者たちが直面した法的・社会的困難を描きます。アメリカの「友好国」としての表向きの姿勢と、原爆投下の責任を回避する態度の矛盾が強調されます。この状況下で、被爆者たちが日本政府を相手に訴訟を起こす決意に至った経緯が描かれます。[](https://books.rakuten.co.jp/rb/17887521/)[](https://president.jp/articles/-/84467) #### **第5章 女性弁護士三淵嘉子の誕生** 三淵嘉子の人生の前半を振り返り、彼女が日本初の女性弁護士の一人となった経緯を詳述します。1914年に生まれ、1938年に司法試験に合格、1940年に弁護士登録を果たした三淵は、女性が法曹界で活躍することが極めて困難だった時代に果敢に挑戦しました。彼女のモットー「家庭に光を、少年に愛を」は、後の家庭裁判所での活動の基盤となります。この章では、彼女の教育背景、家族との関係、及び法曹界での苦労が描かれ、原爆裁判に至るまでのキャリア形成を理解する土台を提供します。[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1802355)[](https://store.shopping.yahoo.co.jp/in-place/978-4-909447-29-6.html) #### **第6章 家庭裁判所の母** 戦後、三淵は裁判官に転身し、家庭裁判所の設立と発展に大きく貢献しました。この章では、彼女が家庭裁判所で少年事件や家庭問題を扱い、「家庭裁判所の母」として知られるようになった功績を紹介します。彼女の人間中心のアプローチと、弱者を守る姿勢が強調され、原爆裁判での彼女の倫理的立場に繋がる価値観が示されます。[](https://books.rakuten.co.jp/rb/17887521/)[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1802355) #### **第7章 原爆裁判** 本書の核心となる章で、原爆裁判(1955年-1963年)の詳細を解説します。1955年、広島と長崎の被爆者5人が日本政府を相手に損害賠償を求める訴訟を大阪地裁と東京地裁に提訴。1960年に大阪地裁の訴訟が東京地裁に併合され、8年にわたる審理が続きました。三淵嘉子は東京地裁民事24部の右陪席判事として、初回から結審まで一貫して裁判を担当。裁判では、原爆投下が「無差別爆撃」であり、毒ガス以上の苦痛をもたらす兵器の使用は国際法(ハーグ陸戦条約など)に違反するかが争点となりました。 1963年12月7日、裁判長・森田貫一、右陪席・三淵嘉子、左陪席・山本隆夫の合議体は、「広島・長崎への原爆投下は無防守都市への無差別爆撃であり、国際法違反」とする画期的な判決を下しました。しかし、日本政府に対する損害賠償請求は、サンフランシスコ平和条約による請求権放棄を理由に棄却されました。この判決は、被爆者救済や反核運動に大きな影響を与え、1996年の国際司法裁判所(ICJ)の「核兵器の使用は一般的に国際法違反」とする勧告的意見にも影響を及ぼしました。[](https://www.tokyo-np.co.jp/article/343358)[](https://president.jp/articles/-/85798)[](https://president.jp/articles/-/84467) #### **第8章 三淵嘉子の終わりなき戦い** 三淵は原爆裁判後も裁判官として活躍し、1973年に横浜家庭裁判所長を務めた後、退官。退官後は核兵器禁止の署名活動に参加するなど、反核運動に静かに貢献しました。彼女が原爆裁判について生前ほとんど語らなかった理由として、裁判官の守秘義務や、判決が政治的影響を及ぼすことを避けたかった可能性が指摘されます。長男の芳武氏の証言によれば、彼女は裁判の内容を家族にも明かさなかったといいます。この章では、三淵の晩年と、彼女の信念が現代の核問題にどう響くかを考察します。[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1802355)[](https://president.jp/articles/-/85798) #### **「原爆裁判」判決文** 本書の後半には、1963年の原爆裁判判決文の全文が収録されています。判決文は法的な表現でやや難解ですが、原爆投下が「不必要な苦痛を与える兵器の使用」として国際法違反であると明確に述べ、核兵器の非人道性を法的に定義した点で歴史的意義を持ちます。読者からは「80ページに及ぶ判決文は一般読者には読みにくい」との声もありますが、判決の核心部分は、核兵器使用の違法性を世界で初めて司法の場で認めた点にあります。[](https://www.hmv.co.jp/artist_%25E5%25B1%25B1%25E6%2588%2591%25E6%25B5%25A9_000000000798205/item_%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586%25E8%25A3%2581%25E5%2588%25A4-%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25A1%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25AB%25E3%2581%25AE%25E5%25A4%25A7%25E7%25BD%25AA%25E3%2582%2592%25E8%25A3%2581%25E3%2581%2584%25E3%2581%259F%25E4%25B8%2589%25E6%25B7%25B5%25E5%2598%2589%25E5%25AD%2590_15000454)[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784909447296) --- ### **本書の特徴と評価** - **三淵嘉子の役割の深掘り**:本書は、三淵が原爆裁判の右陪席判事として全審理に関与した事実を強調し、彼女の沈黙の背景や信念を探ります。ただし、彼女の個人的な声や内面が十分に描かれていないとの批判もあり、タイトルに「三淵嘉子」を冠している点で期待とのギャップを感じる読者もいます。[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1802355)[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784909447296) - **原爆とアメリカの責任**:アメリカの原爆開発・投下の背景、及び残留放射線の隠蔽など、戦争犯罪としての側面を詳細に検証。読者からは「アメリカの人種差別的な動機」や「トルーマン大統領の判断」に関する記述が衝撃的との声が上がっています。[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784909447296) - **現代への意義**:本書は、ウクライナ戦争やロシアの核威嚇など、現代の核問題と原爆裁判の判決の関連性を指摘。2024年のノーベル平和賞を日本被団協が受賞したことにも触れ、反核運動への影響を評価しています。[](https://www.amazon.co.jp/%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586%25E8%25A3%2581%25E5%2588%25A4-%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25A1%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25AB%25E3%2581%25AE%25E5%25A4%25A7%25E7%25BD%25AA%25E3%2582%2592%25E8%25A3%2581%25E3%2581%2584%25E3%2581%259F%25E4%25B8%2589%25E6%25B7%25B5%25E5%2598%2589%25E5%25AD%2590-%25E5%25B1%25B1%25E6%2588%2591%25E6%25B5%25A9-ebook/dp/B0D5XLN37Y)[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1802355) - **批判点**:一部の読者は、三淵の生涯に関する記述が少なく、原爆開発や判決文にページが割かれすぎていると感じ、「タイトル詐欺」との声も。判決文の難解さも一般読者にとってハードルとされています。[](https://www.hmv.co.jp/artist_%25E5%25B1%25B1%25E6%2588%2591%25E6%25B5%25A9_000000000798205/item_%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586%25E8%25A3%2581%25E5%2588%25A4-%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25A1%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25AB%25E3%2581%25AE%25E5%25A4%25A7%25E7%25BD%25AA%25E3%2582%2592%25E8%25A3%2581%25E3%2581%2584%25E3%2581%259F%25E4%25B8%2589%25E6%25B7%25B5%25E5%2598%2589%25E5%25AD%2590_15000454)[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784909447296) --- ### **総括** 『原爆裁判―アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子』は、原爆投下の歴史的背景と、国際法違反を認めた画期的な判決の意義を詳細に解説する一冊です。三淵嘉子の人生を通じて、女性法曹の先駆者としての功績と、核兵器の非人道性を法的に問うた裁判の重要性を浮き彫りにします。現代の核問題に繋がる視点を提供し、被爆者救済や反核運動の歴史的文脈を理解する上で貴重な資料です。ただし、三淵の内面や裁判での具体的な役割に焦点を当てた記述が少ない点は、朝ドラファンや彼女の伝記を期待する読者にとって物足りなさを感じさせる可能性があります。 本書は、歴史、法律、反核運動に関心のある読者、及び「虎に翼」を通じて三淵嘉子を知った読者に強く推薦されます。原爆裁判の判決文全文を含むため、学術的興味を持つ読者にも有用ですが、一般読者には判決文の難解さが障壁となる場合があります。[](https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1802355)[](https://president.jp/articles/-/85798) --- ### **参考文献** - 本書の情報は、提供されたウェブ検索結果(Amazon、楽天ブックス、紀伊國屋書店、HMV、読書メーター、毎日ワンズ公式サイト、東京新聞、PRESIDENT等)及びX投稿に基づいています。 - 特に、原爆裁判の詳細や三淵の関与については、東京新聞()やPRESIDENT()の記事が参考になりました。[](https://www.tokyo-np.co.jp/article/343358)[](https://president.jp/articles/-/85798)[](https://president.jp/articles/-/84467) - 読者のレビューや感想は、Amazon()、読書メーター()、及びX投稿()から引用。[](https://www.amazon.co.jp/%25E5%258E%259F%25E7%2588%2586%25E8%25A3%2581%25E5%2588%25A4%25E2%2580%2595%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25A1%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25AB%25E3%2581%25AE%25E5%25A4%25A7%25E7%25BD%25AA%25E3%2582%2592%25E8%25A3%2581%25E3%2581%2584%25E3%2581%259F%25E4%25B8%2589%25E6%25B7%25B5%25E5%2598%2589%25E5%25AD%2590-%25E5%25B1%25B1%25E6%2588%2591-%25E6%25B5%25A9/product-reviews/4909447296?reviewerType=all_reviews)[](https://bookmeter.com/books/22000700) 本書の購入は、Amazon、楽天ブックス、紀伊國屋書店、セブンネット、ヨドバシ.comなどで可能です。価格は1,540円(税込)で、送料無料の店舗も多いです。[](https://books.rakuten.co.jp/rb/17887521/)[](https://7net.omni7.jp/detail/1107511093-1107511093?cateType=1&siteCateCode=002101)[](https://www.yodobashi.com/product/100000009003856482/)