『地図から消される街』 3.11後の「言ってはいけない真実」
青木美希/著 講談社 2018.3
帰還率「4.3%」の衝撃、母子避難者の自死、不正と中抜きだらけの除染…。避難指示解除が進む福島第一原子力発電所近隣地域で進行する恐るべき事態とは。震災から取材を続ける女性記者が「不都合な事実」を記す。
「地図から消される街」
先日、ニュースで、福島県からの原発避難者に対するいじめのニュースがあったので、地元の文京区立図書館で、「地図から消される街」という本を借りて読んでみました。
著者は、福島原発事故を追い続けている方で、原発事故関連のことが本に書かれています。
はじめにの文章の中で著者は、ネット社会になり、自分の好きな分野の話題や情報を入手できるようになり、自分の好きな情報以外は見ない世の中になり不都合な事実などを「なかった」ことにしようとする国家権力の思惑通りになってしまっていると書いています。
僕もネットをよく利用しているので、ネットのことは分かるし、著者の言いたいことも分かるような気がしました。
本を読んでみると、福島県で東電に就職することが良いこととされてきて、良い就職先として東電という企業があったことが書かれていました。
福島原発事故以来、東電のことを悪く書いている新聞記事なども多く読んできたので、東電とは酷い企業だと思っていましたが、福島原発事故が起きる前は、就職希望者の多い企業だったようです。
ただ、東京にある東電本社と、福島県にある原発の現場では不信感もあったようです。
除染作業の不正のことも書かれていました。
除染と言う言葉は嘘で、言葉にするなら、「移染」=(汚染を移すこと)というのが正しいとありました。
除染の現場では、放射能汚染された物質を川に流す業者などもあり、除染の不正があったことも書かれています。
除染作業の現場の労働の酷さも書かれていました。
原発避難者に対するいじめのことについても書かれています。
東京都千代田区でのいじめのことについて書かれています。
父親が福島県で仕事をしていて、自分の子供を被爆させたくないと思い、東京に引っ越してきた(避難してきた)が、子供が学校でいじめられ、親のお金を盗んで、ジュースやお菓子を買っておごらせられた事件のことについて書いています。
学校でおごらせられた子供は、ジュースやお菓子を買わないといじめられるから、親のお金を盗んでジュースやお菓子を買っていたということです。
この事件のことは、僕もニュースで見た記憶があります。
原発避難者に対して、親身になって気遣うとかするなら分かりますが、これだけ露骨にいじめがあったと分かると僕もやりきれない気持ちになりました。
新聞社を含めたマスコミ関係者には、このような原発避難者に対するいじめが起きないようにきちんといじめの事件を報道したり、話を聞いたりして記事にするなり、きちんとした仕事をしていただきたいと思いました。
タイトルになっている、「地図から消される街」についてはエピローグに書かれています。
著者がゼンリンの住宅地図を手に浪江町の中心街を歩いてみると、まちのあちこちの名前が消えている。地図をチェックしながら歩くと、地図に掲載されている約60店舗のうち、7割が廃屋状態、2割が更地になっていたということです。
街の中心街の名前すら現地ではわからなくなっていて、街が名前をなくしていると書いてあります。
東日本大震災後の辛い現実を書いている本で、一読の価値のある本だと思いました。
先日、図書館で、「地図から消される街」という本を借りて読んでみたので本を読んでの感想を書いてみました。
早稲田大学探検部関係者には是非、ご一読していただきたい本です。
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