『「福島に生きる」ということ』 バラバラ・ハラスメントを超えて
中澤正夫/著 本の泉社 2018.2
進行形の原発事故を横目で見ながら「福島に生きる」ための、新生の道を模索するさまざまな試み。こころのケアをめざして支援に携わってきた「風の人」が綴った7年の支援記録。福島に住む保健師、医師との対談も収録。
『「福島に生きる」ということ バラバラ・ハラスメントを超えて』 徹底詳細要約書籍概要『「福島に生きる」ということ バラバラ・ハラスメントを超えて』(本の泉社、2018年2月刊)は、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故(以下、原発事故)による被害を、精神科医の視点から描いた一冊。著者の中澤正夫は、事故後の福島県相双地域(相馬・双葉)をフィールドに、7年間の支援活動を記録。原発・津波被害がもたらしたコミュニティの分断―集落、近隣、親戚、家族、夫婦までもが「バラバラ」にされる状況―を「バラバラ・ハラスメント」と命名し、これを超えるための新生の道を模索する。単なる修復や再生ではなく、心のケアを中心とした支援の試みを焦点に、進行形の原発事故を横目で見ながら「福島に生きる」意味を問いかける。被災者の孤立防止、未来共有の取り組みを、対談形式も交えて記述。出版当時、震災7年目の文脈で、被災地の心の傷と回復の可能性を照らす書として注目された。読者からは「被災者の声が活き活きと描かれ、希望を感じる」と評価される一方、復興政策の限界を指摘する声もある。 著者紹介中澤正夫(なかざわ・まさお、1937年群馬県生まれ)は、精神科医。群馬大学医学部卒業後、佐久総合病院、群馬大学医学部精神科、代々木病院副院長などを歴任し、2002年に退任。現在は代々木病院嘱託医。長年、長野県・群馬県の山村を研究フィールドに、地域ぐるみの精神衛生診療を実践。統合失調症治療に定評があり、被爆者(ヒバクシャ)の心のケアにも携わり、NPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」副代表理事を務める。著書多数で、『こころの医者のフィールド・ノート』(ちくま文庫)、『ヒバクシャの心の傷を追って』(岩波書店)、『ストレス「善玉」論』(岩波現代文庫)、『死のメンタルヘルス』(岩波書店)など、心の病や地域精神保健をテーマにした作品が多い。本書では、原発事故後の福島支援を「風の人」として記録し、被災地の心の傷と回復を専門的に分析。 目次
- 第一章 やっぱり、未だはじまったばかり
- 第二章 フラッシュ・フォワード
- 第三章 「一滴の水」から大河にならなくてもよい
- 第四章 相馬の時間論
- 第五章 孤立させない、結びつける、そして未来を共有する (対談) 伏見香代×中澤正夫
- 第六章 福島の地で人々とともに生き抜く (対談) 齋藤 紀×中澤正夫
- 相双のいま
- 終わりにかえて
- 肯定的評価:五章と六章の対談が必読、バラバラハラスメントの不幸を深く描き、コミュニティ毀損の表現として秀逸(読書メーター)。分断と向き合う視点が鋭く、希望を与える(東北の本棚)。
- 批評的指摘:政策批判が強いが、支援記録として価値高し。章ごとの深掘りがもっと欲しいとの声。
- 全体評価:Amazon平均★3.5(2件)、読書メーターで好評。震災文学として、再読価値あり。
「福島に生きる」ということーバラバラ・ハラスメントを超えて [ 中澤正夫 ] |