『象の背中で焚火をすれば』
広瀬隆/著 NHK出版 2011.06
巨大なプレートの境界部にできた島国で原子炉に火を灯すのは、象の背中で焚火をするようなもの-。1998年刊「地球の落とし穴」と1999年刊「パンドラの箱の悪魔」から、原発と社会を考えるための4短編を選び再構成。
先日、広瀬隆さんの著作、「象の背中で焚火をすれば」という本を文京区立図書館で借りて、読んでみました。
広瀬隆さんとは早稲田大学理工学部応用化学科出身の東京都杉並区在住の作家の方です。
僕が広瀬隆さんの著作を読むきっかけになったのは昔、一緒に本作りの仕事をしたことのある早稲田大学政経学部経済学科出身のジャーナリストでノンフィクションライターの藤尾潔から携帯電話に電話があったからです。
藤尾潔から僕の携帯電話に電話があり、
「広瀬隆は原発について何と言っている」
と言ってきたので、広瀬隆さんの著作を読むことになりました。
阪神淡路大震災について書かれている部分がとても心に残りました。
阪神淡路大震災では大地震発生後、72時間、最初の3日間が生死の分かれ目だったとのことが書かれています。
大地震発生後3日間は外部からほとんど援助の手が差し伸べられなかったと書いてあります。
神戸の人は、われわれに今もこう強く忠告する。
「みなさんは、テレビを通じてあの惨事を頭で理解したつもりだろうが、それは、私たちが体験したことと、まったく違う出来事です。テレビの画面には、ほとんど何も見えていない。死んでいった家族の叫び声が聞こえない。最初の瞬間に、生死の分かれ道があったのです。何度でも言っておきます。明日、あのような大地震が来ると考えて、充分すぎるほど備えておきなさい。その日になってからでは手おくれなのです」
孤独で、最も苦しい時期に、誰も助けに来てくれない。それが震災の正体だったという。
と書いてあります。
東京でも大きな地震が起きることは想定されていて、大地震に対して、食料や水の備蓄などは、最低3日分はしておかなければならないのだと思います。
仮に首都圏で大きな地震が発生すると、日本人の3分の1が苦しむことになるとあります。
プレート境界が三つも揃った地球上の最も危険な地帯に、化学プラントと原子力発電所を建設し、高層ビルを並べ立てて、そのうえ蟻のような大群のように人間が肩寄せ合って生きている。
遠くの惑星に住む生物がこの姿を望遠鏡で眺めたなら、「象の背中で焚火をする行為に等しい」と絶句するに違いないと書いていて、日本とは象の背中で焚火をしているようなものだとの意のことを書かれているのがとても印象に残りました。
早稲田大学探検部関係者には是非、ご一読していただきたい本です。