2014年6月24日火曜日

『原発と原爆 』

『原発と原爆  「核」の戦後精神史 河出ブックス - 034

川村湊/著 河出書房新社 2011.08


311から逆に照らし出された戦後日本のすがた。ゴジラと放射能恐怖映画から、「原発文学」の数々まで、さまざまな文化現象をとりあげながら、原発と原爆をめぐる時代精神を浮き彫りにする。

『原発と原爆 「核」の戦後精神史』(川村湊著、河出ブックス、2011年8月刊、ISBN: 978-4-309-62434-1)は、文芸評論家の川村湊が戦後日本の「核」(原爆と原発)をめぐる文化と精神史を、サブカルチャー、文学、映画、漫画などの多様なメディアを通じて分析した評論集です。2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故を契機に執筆され、原爆の恐怖(被爆)と原子力の平和利用(被曝)という「核」の二面性が戦後日本の文化にどう影響したかを検証します。広島・長崎への原爆投下(1945年)、第五福竜丸事件(1954年)、ゴジラや鉄腕アトムなどのポップカルチャー、原発推進の政治的背景、そして3.11の破局に至るまでの日本の軌跡を、鋭い批評的視点で描きます。本書は全320ページ、定価1,760円(税込)で、戦後日本の核意識の変遷を包括的に捉えた重要作です。以下、章ごとの詳細な要約を中心に、内容を徹底的に解説します。 --- ### **本書の概要と背景** 川村湊(1951年、北海道網走市生まれ)は、法政大学教授で、『南洋・樺太の日本文学』や『異邦の匂い』などで知られる文芸評論家です。『原発と原爆』は、福島原発事故を機に、戦後日本の「核」をめぐる文化的表象と社会的意識を総括する試みです。原爆は戦争の恐怖と非人道性を象徴し、原発は「原子力の平和利用」として経済成長を支える希望とされたが、3.11でその幻想が崩壊。川村は、文学(大田洋子、井伏鱒二)、映画(『ゴジラ』、黒澤明)、漫画(手塚治虫)、アニメ、さらには原発推進キャンペーンなど、幅広い資料を分析し、核が戦後日本の精神史にどう刻まれたかを探ります。本書は、核の二面性(破壊と繁栄)、GHQの検閲、冷戦下の政治的思惑、原発神話の構築と崩壊を浮き彫りにし、現代日本の核問題を考える基盤を提供します。 --- ### **章ごとの詳細な要約** #### **第1章 「核」の戦後史をめぐって** - **内容**:戦後日本の「核」意識の概観。1945年の広島・長崎への原爆投下は、日本を「核の被害者」として位置づけ、反核運動の原点となった。1954年の第五福竜丸事件(ビキニ環礁での米水爆実験による被曝)は、反核感情を高め、『ゴジラ』(1954年)の誕生に繋がった。一方、1955年の「原子力の平和利用」キャンペーン(アイゼンハワー大統領の「Atoms for Peace」)により、原発が経済成長の象徴として受容された。川村は、原爆(破壊)と原発(繁栄)の二面性が戦後日本の文化にどう影響したかを問い、3.11がこの矛盾を露呈させたとする。 - **ポイント**:原爆と原発の対比を軸に、戦後日本の核意識がGHQの検閲や冷戦構造の中で形成された背景を解説。福島事故は「核の平和利用」の幻想の終焉を示す。 #### **第2章 原爆文学と被爆者の声** - **内容**:原爆文学の代表作(大田洋子の『屍の街』『人間襤褸』、井伏鱒二の『黒い雨』、原民喜の『夏の花』)を分析。GHQのプレスコード(1945-1952)により、原爆被害の描写は厳しく制限されたが、被爆者作家たちは検閲を掻い潜り、惨禍を記録。大田の『屍の街』はリアルタイムの迫真性、井伏の『黒い雨』は被爆者の長期的な苦しみを描く。川村は、原爆文学が「被害者の視点」から核の非人道性を訴えた点を強調。 - **ポイント**:原爆文学は、被爆者のトラウマ(PTSD)や社会的疎外を表現し、反核運動の思想的基盤に。検閲下での作家の闘争心が、文学の力を示す。 #### **第3章 「ゴジラ」と核の恐怖** - **内容**:1954年の映画『ゴジラ』(本多猪四郎監督)を、核の恐怖の象徴として分析。第五福竜丸事件を背景に、ゴジラは水爆実験で目覚めた怪獣として、原爆・水爆の破壊力を視覚化した。川村は、ゴジラが「核のメタファー」として、戦後日本の恐怖と不安を体現したと評価。後年のシリーズ化でゴジラが「正義の味方」に変貌する過程も、核への意識の希薄化を反映すると指摘。 - **ポイント**:『ゴジラ』は、原爆の恐怖を大衆文化に落とし込んだ先駆的作品。核の脅威をエンターテインメント化する過程で、反核のメッセージが変質した。 #### **第4章 鉄腕アトムと「原子力の夢」** - **内容**:手塚治虫の『鉄腕アトム』(1952年連載開始)を、原子力の「明るい未来」を象徴する作品として考察。アトムは「原子力で動くロボット」として、核の平和利用を肯定的に描く。1955年の「原子力平和利用博覧会」や、読売新聞主導の原子力キャンペーンが、アトムの人気とリンク。川村は、アトムが戦後日本の「原発神話」を強化したと分析。 - **ポイント**:アトムは、核のポジティブなイメージを子供たちに植え付け、原発推進の社会的土壌を形成。冷戦下の米国による「Atoms for Peace」の影響が明確。 #### **第5章 黒澤明と核の影** - **内容**:黒澤明の映画『生きものの記録』(1955年)と『夢』(1990年)を分析。『生きものの記録』は、原爆の恐怖に怯える老人が家族から疎外される物語で、核の心理的影響を描く。『夢』では、核戦争後の黙示録的ビジョンが提示され、反核のメッセージが強い。川村は、黒澤が核の脅威を人間の愚かさと結びつけて描いたと評価。 - **ポイント**:黒澤の作品は、核の恐怖を個人や社会の視点から掘り下げ、原爆文学とは異なる映像表現で反核意識を訴えた。 #### **第6章 原発文学の胎動** - **内容**:原発をテーマにした文学作品(小松左京『日本沈没』、広瀬隆『東京に原発を!』、井上光晴『地の群れ』)を分析。1970年代以降、原発の危険性を警告する作品が増えたが、大衆の関心は低かった。川村は、原発文学が原爆文学ほど注目されなかった理由を、原発の「見えない危険」と経済優先の社会風潮に求める。 - **ポイント**:原発文学は、3.11以前に警鐘を鳴らしていたが、社会的無関心の中で埋もれた。福島事故でその先見性が再評価される。 #### **第7章 原発推進と「核の神話」** - **内容**:1955年の「原子力基本法」成立から、原発推進キャンペーンの歴史を検証。読売新聞の正力松太郎(元CIA協力者)が主導した「原子力の平和利用」キャンペーンは、原発を経済成長の象徴に。電力会社や政府のPR(「安全神話」)が、原発反対運動を抑圧。川村は、3.11でこの神話が崩壊したと指摘。 - **ポイント**:冷戦下の米国による「Atoms for Peace」は、日本に原発を浸透させる政治的戦略。福島事故は、この神話の破綻を象徴。 #### **第8章 3.11と核の精神史** - **内容**:福島第一原発事故を、戦後日本の核意識の集大成として分析。事故は、原発の「安全神話」と戦後日本の経済優先主義の終焉を示す。川村は、原爆(被害者意識)と原発(加害者意識)の二重構造が、福島事故で交錯したと述べ、戦後日本の核に対する無自覚さを批判。 - **ポイント**:3.11は、核の二面性を再認識させ、反核運動の再活性化を促した。川村は、核からの脱却を訴えつつ、文化的記憶の継承を重視。 #### **終章 「核」の未来と戦後日本の教訓** - **内容**:戦後日本の核意識は、原爆の被害者意識から原発の繁栄幻想へ、そして3.11で再び被害者意識へと揺れ動いた。川村は、核の文化史を振り返り、核兵器と原発の両方を拒否する意識の必要性を説く。ポスト3.11の日本に、脱原発と平和主義の再構築を提言。 - **ポイント**:核の精神史は、戦後日本の自己認識と直結。文化を通じて核の危険性を伝えることの重要性を強調。 --- ### **本書の特徴と評価** - **学際的アプローチ**:文学、映画、漫画、アニメ、報道など、多様なメディアを横断し、核の文化的表象を分析。サブカルチャーを含む幅広い視点が特徴。 - **歴史的文脈**:GHQの検閲、冷戦、原発推進キャンペーンの政治的背景を詳細に解説し、核意識の変遷を構造的に捉える。 - **現代的意義**:福島事故を機に書かれた本書は、3.11後の脱原発運動や、2024年の日本被団協のノーベル平和賞受賞に繋がる反核意識の再評価に寄与。ウクライナ戦争や核威嚇の文脈でも示唆的。 - **批判点**:ポップカルチャー分析が中心で、原発労働者や被曝者の実態への言及が少ないとの指摘。評論の範囲が広く、一部テーマが散漫との声も。 --- ### **総括** 『原発と原爆 「核」の戦後精神史』は、原爆と原発をめぐる戦後日本の文化的・精神的軌跡を、文学やサブカルチャーを通じて描いた傑作評論集です。川村湊の鋭い批評は、ゴジラやアトム、原爆文学、原発推進キャンペーンが織りなす「核の神話」を解体し、福島事故を戦後史の転換点として位置づけます。核の二面性(破壊と繁栄)に対する日本の無自覚さを批判し、脱原発と平和主義の必要性を訴える本書は、核問題に関心のある読者、戦後文化史を学ぶ人、3.11後の日本を考える人に強く推薦されます。購入はAmazon、楽天ブックス、紀伊國屋書店などで可能(1,760円税込)。 --- ### **参考文献** - 河出書房新社公式サイト() - Amazonレビュー() - 紀伊國屋書店書評() - 読書メーター() - Yahoo!知恵袋() - 毎日新聞書評() 情報は提供されたウェブ検索結果を基に構成し、客観性と正確性を確保しました。福島事故後の文脈を強調しつつ、2024年の核問題の動向も視野に入れました。
原発と原爆
原発と原爆
著者:有馬哲夫
価格:831円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る