2017年12月16日土曜日

『東電原発裁判 』 福島原発事故の責任を問う

『東電原発裁判  福島原発事故の責任を問う          

添田孝史/著       岩波書店 2017.11


2017年春、福島原発事故における東京電力の刑事責任を問う初公判が開かれた。津波の予見は不可能とする被告の主張は真実なのか。裁判を通じて明らかにされたデータと証拠から、事故の原因をあらためて検証する。

先日、文京区立図書館で、「東電原発裁判」という本を借りて読んでみました。

福島原発事故に関する刑事裁判のことについて書かれている本です。

本を読んでみると、福島原発事故に関する東電の刑事責任を問えるのかという内容でした。

裁判では、検察官役弁護士の方は、東電を業務上過失致死傷の容疑で刑事責任を問おうとしていることが分かりました。

裁判の争点は、福島第一原発を襲った津波が予見可能かだったかが争点のようです。

福島第一原発を襲った津波が予見可能だったのか、つまり想定されていたものだったのかが争点になっているようです。

津波が予見可能だったら、防潮堤を作らならければならず、東電に原発を運転する上での業務上の過失があったことになるのだと思います。

本の中では、貞観地震を持ち出していて、貞観地震級の地震が起きることを想定していれば、津波は予見可能だったとのことが書かれています。

 東電裁判では検察官役弁護士側は、

●最大157メートルの津波は予測できていた。
●高い津波を予見できていたので、防潮堤の建設、代貸機器を高台に置くなどの安全対策を実施する義務があった。
●それらの対策が完了するまでは福島第一原発の運転を停止しておくべきだった。

と主張していると書いてあります。

一方で被告の側は、

157メートルは試算にすぎず、対策のもとにするには不確実性が高かった。
157メートル想定が妥当なのか土木学会に相談しており、その結果に従う予定だった
●たとえ157メートルの試算にもとずいて対策をしていたとしても、東日本大震災時の津波は、試算していた津波と襲来する向きや、浸水の規模が違う想定外のものだったので事故は防げなかった。

と主張していると書いてあります。

検査官役弁護士側の主張と被告側の主張を良く読んで、裁判を考えるのが良いと思いました。

この裁判の検察官役指定弁護士には、凄腕刑事弁護士がなっているとあります。

主任格の石田省三郎弁護士は「日石郵便局・土田邸爆破・ピース缶爆弾事件」やロッキード事件、リクルート事件、東電女性社員殺害事件など戦後史に残る刑事事件の弁護に携わってきた弁護士の方のようです。

神山啓史弁護士は、最高司法研修所の教官を務める方で、東電女性社員殺害事件ではネパール人の男性の再審無罪を勝ち取った弁護士の方のようです。

 神山啓史さんのウィキペディアはこちら→神山啓史

裁判に至るまでの過程のことも書かれています。

時系列で裁判に至った過程を書き出すと以下のようになります。

福島原発告訴団が結成集会を開いたのは事故から一年後の2012316日。

東電幹部や国の関係者ら33人を業務上過失致死傷などの容疑で告訴、告発状を福島地検に提出したのが2012612日。

告訴・告発は東京地検に担当が移され、201399日に東京地検は全員の不起訴処分を決定。

2014731日に東京第五検察審査会は、勝俣氏ら三人に「起訴相当」一人に「不起訴相当」の議決を出し、東京地検は再捜査を始めた。

2015122日、東京地検は勝俣氏ら4人を再度不起訴にする。

2015731日、東京第五検察審査会は二度目の起訴すべきだとの議決を発表し勝俣氏ら3人の強制起訴が決まった。

20158月に検察官役の指定弁護士を東京地裁が選任し、起訴状が提出されたのは2016229日。

それから初公判の20176月までさらに14ヶ月余りかかった。

以上です。

本当に長い道のりを経て、東電刑事裁判までこぎつけたことが分かりました。

2005425日のJR福知山線の脱線事故で107人が死亡し、562人が負傷した事故の際にJR西日本が業務上過失致死傷罪で強制起訴されたたが、JR西日本は無罪になったことも本に書かれています。

東電刑事裁判のことが良く分かる本でした。

東電刑事裁判に関心のある方なら一読の価値のある本だと思いました。

先日は「東電原発裁判」という本を借りて読んでみたので本を読んでの感想を書いておきます。

早稲田大学探検部関係者には是非、ご一読していただきたい本です。


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