2014年6月19日木曜日

『福島・柏崎刈羽の原発震災 』



『福島・柏崎刈羽の原発震災  活かされなかった警告

末田一秀/著 七つ森書館 2011.06

福島県いわき市議会議員・佐藤和良による現地の報告をはじめ、現行の原子力防災計画や耐震設計審査指針がいかに破綻したかを明らかにする。放射能汚染と向き合うためのQ&Aも掲載。

『福島・柏崎刈羽の原発震災 活かされなかった警告』(末田一秀、武本和幸共著、七つ森書館、2011年6月刊)は、福島第一原子力発電所事故(2011年3月11日)および柏崎刈羽原子力発電所が過去に経験した地震災害(特に2007年の中越沖地震)を背景に、日本の原子力発電所の安全性と防災体制の問題点を詳細に分析した書籍です。本書は、原発の立地における地質・地震学的リスク、行政や電力会社の不十分な対応、そして活かされなかった過去の教訓を浮き彫りにし、原発政策の根本的な見直しを訴える内容となっています。著者の末田一秀は環境行政に従事し、反原発運動に関わる人物であり、武本和幸は柏崎刈羽原発反対運動の中心人物で、地震災害の現場経験を持つ専門家です。以下に、本書の詳細な要約を章立てで提供します。

1. 序章:原発震災の現実と警告の無視
本書の冒頭では、2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原発事故を「原発震災」と定義し、単なる自然災害ではなく、人為的な政策・運用ミスが重なった複合災害であると強調します。著者は、2007年の中越沖地震で柏崎刈羽原発が被災した際の教訓が、福島事故防止に活かされなかったことを問題視します。この地震では、柏崎刈羽原発が設計想定(ガル)を大幅に超える揺れに見舞われ、火災や放射性物質の微量漏洩が発生しましたが、重大事故には至らず、電力会社や政府は「安全神話」を維持しました。しかし、この事件は原発の地震リスクを明確に示す警告だったと述べ、なぜその教訓が無視されたのかを検証する動機を提示します。

2. 柏崎刈羽原発と中越沖地震の教訓
本章では、2007年7月16日の中越沖地震(マグニチュード6.8)が柏崎刈羽原発に与えた影響を詳細に分析します。主なポイントは以下の通りです:
  • 地震の規模と影響:地震の震源は柏崎刈羽原発の至近距離にあり、観測された加速度は設計基準(450ガル)を大幅に超える最大2,058ガルを記録。変圧器火災、配管損傷、放射性物質の微量漏洩(海水への放出)などが発生。
  • 東京電力の対応の問題:東京電力は当初、被害の規模を過小報告し、情報公開が遅れた。また、火災対応の遅れや、敷地内の地盤変形(隆起・沈下)の深刻さを軽視した。
  • 規制当局の不備:当時の原子力安全・保安院は、電力会社への依存度が高く、独立的・科学的な検証が不十分だった。地震後の原発再稼働を急ぐ姿勢も問題視される。
  • 地元住民の視点:著者の武本は、柏崎刈羽原発反対同盟のメンバーとして、地元住民の不安や反対運動の歴史を紹介。1964年の新潟地震、2004年の中越地震の経験から、地震国日本での原発立地の危険性を訴えてきたが、行政や電力会社に無視されてきた経緯を述べる。
この章では、中越沖地震が「福島事故の予行演習」であったにもかかわらず、設計基準の見直しや防災対策の強化が十分に行われなかったことを批判します。

3. 福島第一原発事故の背景と原因
本章では、福島第一原発事故の直接的原因と、その背後にある構造的問題を詳細に検証します。主な内容は以下の通りです:
  • 事故の経緯:2011年3月11日の東日本大震災(マグニチュード9.0)による津波が、福島第一原発の全電源喪失(SBO)を引き起こし、1~3号機でメルトダウンが発生。放射性物質が大気・海洋に放出され、周辺住民の避難や長期的な環境汚染を引き起こした。
  • 津波想定の過小評価:東京電力は、過去の津波データを軽視し、敷地の防潮堤高さを5.7mに設定。実際の津波は最大15mに達し、非常用電源や冷却システムを水没させた。著者は、貞観地震(869年)の津波記録が無視された点を特に問題視。
  • 地震による損傷の可能性:津波到達前の地震動で、配管や機器が損傷した可能性を示唆。公式報告では津波が主因とされるが、地震そのものの影響が十分検証されていないと批判。
  • 安全神話と規制の欠陥:日本の原発政策は「絶対安全」を前提に、過酷事故(シビアアクシデント)の想定を避けてきた。原子力安全委員会や保安院は、電力会社との癒着構造により、厳格な規制を行わなかった。
  • 中越沖地震との類似性:柏崎刈羽での地盤変形や設計想定超えの揺れは、福島でも同様のリスクを示していた。にもかかわらず、東京電力は「想定外」を繰り返し、対策を怠った。

4. 原発立地の地質・地震学的リスク
本書の中核をなす章で、日本列島の地質構造と原発立地の危険性を科学的に分析します。著者は、プレート境界に位置する日本での原発建設が、地震・津波・火山活動のリスクを無視した政策であると批判します。主なポイントは以下の通り:
  • 活断層の評価不足:柏崎刈羽原発の敷地近傍には、活断層の存在が指摘されていたが、電力会社は「活断層ではない」と主張。福島第一原発でも、敷地内の断層の活動性が過小評価された。
  • 地盤の脆弱性:両原発とも、軟弱地盤や沖積層の上に建設されており、地震動の増幅や液状化のリスクが高い。特に柏崎刈羽では、中越沖地震で敷地内の地盤隆起(最大2m)が観測された。
  • 津波リスクの軽視:歴史的津波記録(例:貞観地震、明治三陸地震)の科学的分析が不十分で、防潮堤や重要機器の配置が不適切だった。
  • 地震予知の限界:日本の地震学は、発生時期や規模の正確な予測が困難であるにもかかわらず、原発の耐震設計は「最大想定地震」に依存。この想定が過小であるケースが繰り返された。
著者は、地震学者や地質学者の警告(例:石橋克彦教授の津波リスク指摘)が、政策決定に反映されなかった背景に、経済優先の政治構造と電力会社の影響力を指摘します。

5. 防災体制と住民の視点
この章では、原発事故時の防災体制の不備と、住民の視点から見た問題を掘り下げます:
  • 不十分な避難計画:福島事故では、避難指示の遅れや混乱により、住民が放射線被曝リスクにさらされた。柏崎刈羽でも、避難計画は形式的なもので、実際の地震・津波シナリオに対応できない。
  • 情報公開の欠如:事故発生時、東京電力や政府は、放射能漏洩の規模や健康リスクを過小報告。SPEEDI(放射能拡散予測システム)のデータも公開が遅れた。
  • 地元住民の疎外:原発立地地域の住民は、経済的恩恵(交付金など)と引き換えに、リスクを押し付けられてきた。反対運動は「過激派」とみなされ、意見が政策に反映されなかった。
  • 武本の経験:著者の武本は、刈羽村議会議員としての経験や、中越地震・中越沖地震の災害復旧活動を通じて、住民の安全よりも原発再稼働が優先された実態を告発。

6. 活かされなかった警告と今後の課題
最終章では、過去の教訓がなぜ活かされなかったのか、その構造的要因を総括し、今後の原発政策への提言を行います:
  • 構造的要因
    • 電力会社と政府の癒着:原発推進派の政治家、官僚、電力会社、学会が「原子力ムラ」を形成し、批判的意見を排除。
    • 経済優先の政策:エネルギー安定供給や経済成長を名目に、原発のリスクが軽視された。
    • メディアの役割:原発の危険性を報じるメディアが少なく、電力会社の広告依存が影響。
  • 提言
    • 脱原発への転換:再生可能エネルギーの普及と省エネ技術の推進。
    • 規制機関の独立性強化:原子力規制委員会の独立性を確保し、科学的・透明な審査を実施。
    • 住民参加の意思決定:原発政策に地元住民の声を反映させる仕組みの構築。
    • 地震・津波リスクの再評価:最新の地質学・地震学に基づく原発立地の全面見直し。

補足:著者の視点と七つ森書館の背景
  • 著者の立場:末田一秀は、反原発新聞の編集委員やJCO臨界事故の評価会議参加者として、原発の安全性問題に長年取り組んできた。武本和幸は、柏崎刈羽原発の地元で反対運動を牽引し、地震災害の現場を知る実践者。両者とも、市民目線の批判的アプローチを重視。
  • 七つ森書館の特徴:本書を発行した七つ森書館は、脱原発や平和運動関連の出版で知られる小規模出版社。高木仁三郎の著作集など、反原発の重要文献を多数刊行しており、本書もその一環として位置づけられる。

評価と意義
本書は、福島事故直後に刊行され、感情的な反原発論ではなく、科学的・歴史的データに基づく分析を提供した点で価値があります。特に、柏崎刈羽原発の事例を通じて、地震国日本での原発立地の危険性を具体的に示した点は、政策議論に重要な視座を提供します。ただし、著者の反原発スタンスが明確なため、原発推進派の視点や技術的改善の可能性についてはほとんど触れられておらず、バランスを求める読者にはやや一方的と感じられる可能性があります。

結論
『福島・柏崎刈羽の原発震災 活かされなかった警告』は、中越沖地震と福島事故を対比させ、日本の原発政策の構造的欠陥を暴く力作です。地質学、地震学、防災学の視点から原発のリスクを詳細に分析し、過去の警告が無視された背景を明らかにします。著者は、脱原発と住民参加型のエネルギー政策を提唱し、読者に原発問題の再考を迫ります。本書は、原発の安全性やエネルギー政策に関心を持つ市民、研究者、政策立案者にとって、重要な参考文献となるでしょう。

:本要約は、書籍の内容を可能な限り詳細にまとめたものですが、原文の全貌を網羅することはできません。興味のある方は、原著を参照してください。また、引用部分は検索結果に基づく関連情報(特に、)を補足として活用しています。
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