『現代モンゴル読本 』 増補改訂版

『現代モンゴル読本 』 増補改訂版           

佐々木健悦／著 社会評論社         2017.11

日本人の観点からの現代モンゴル論。民主化後の政治、原発とエネルギー、ジャーナリズムなど、モンゴル近現代史と同時代の知られていない諸相を取り上げ、長年、流布されたモンゴルについての間違った通念や俗説を覆す。

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『現代モンゴル読本 増補改訂版』 詳細な要約書籍概要『現代モンゴル読本 増補改訂版』（佐々木健悦 著、社会評論社、2017年11月刊、ISBN: 978-4-7845-1361-1、定価3,520円（税込）、430ページ）は、モンゴル研究者の佐々木健悦氏が執筆した、モンゴルの近現代史と現代社会の諸問題を深く掘り下げた入門書です。初版（2015年刊）を基に、最新の政治・経済・社会動向を反映して増補・改訂されたもので、特に民主化後の変革、資源開発の環境影響、日本との関係性などを更新しています。著者は1947年宮城県生まれ、東京外国語大学モンゴル語学科卒業後、ロシア語学科に学士入学し、千葉県の高校で英語教師を務めました。2008年退職後、モンゴル国で日本語教師、モンゴル語-日本語辞典の編纂、国営モンツァメ通信社での日本語週刊紙『モンゴル通信』の編集・翻訳に従事（2010-2012年）。これらの現地経験を活かし、モンゴルの現実を日本人の視点から分析しています 。本書の目的は、日本人に根強いモンゴルのステレオタイプ（例: チンギス・ハンの末裔が馬で草原を駆け巡る理想郷的なイメージ）を批判的に解体し、現実の複雑な課題を直視させることです。モンゴル近現代史と同時代の知られざる側面を扱い、長年流布された誤った通念や俗説を覆す情報と分析が満載。モンゴル国と真摯に向き合い、モンゴル人と付き合おうとする日本人にとって必読の書と位置づけられています。全体として、政治・外交・社会・経済・文化の多角的な視点からモンゴルを論じ、日本との比較を交えつつ、現実主義的な筆致で描かれています。増補改訂版では、初版以降の資源ブームやエネルギー政策の進展を追加し、ページ数を拡張。読者レビューでは、「きれいごとでない現代モンゴル事情や問題点がよくわかりました。様々な分野でのモンゴルと日本との比較も豊富で、比較文化論が好きな私は興味深く読みました」と評価されており、比較論の観点が魅力の一つです 。本書は全12章構成で、1990年の民主化革命以降のモンゴルを軸に、資源依存の歪み、都市化の弊害、伝統文化の変容などを論じています。著者の現地取材に基づく事例やデータが豊富で、各章に参考文献や統計を付記。モンゴルの「明るい示唆」（例: 教育の質の高さ、再生可能エネルギーの可能性）も指摘し、単なる批判ではなく建設的な視点を提供します 。詳細な章別要約以下は、書籍の目次に基づき、内容紹介やレビューから抽出・総合した要約です。著者の経験を活かした現地視点が特徴で、各章でモンゴルの課題を指摘しつつ、日本との類似・相違を織り交ぜています 。第1章 民主化革命後の政治―問われる民主主義の成熟度
1990年の民主化革命以降の政治変遷を概観。ソ連崩壊後の多党制導入を評価しつつ、政党乱立、汚職、ポピュリズムの弊害を分析。部族主義の残滓と市場経済移行のギャップが民主主義の不安定さを生むと指摘。日本との比較で、金権政治の深刻さを強調。増補版では、2010年代の政権交代事例を追加 。第2章 外交と交流の疑問点
モンゴルの地政学的位置（中国・ロシアに挟まれた「サンドイッチ」状態）を基に、日蒙・中蒙関係を検証。中国依存の経済格差と日本交流の「文化偏重」問題を批判。著者の通信社経験から、モンゴルメディアの日本報道の歪曲を暴露。「第三の隣国」政策の実効性を疑問視し、相互理解の必要性を提言。増補で2010年代の首脳会談を反映 。第3章 モンゴル社会の低迷と混迷
民主化後の社会格差・貧困・ジェンダー問題を扱う。高GDP成長率の一方で、都市貧困層の拡大（ゲル地区のスラム化）を事例に、低迷の構造を解明。アルコール依存や家庭内暴力の増加を統計で示し、遊牧民の都市流入によるアイデンティティ危機を論じる。日本との比較で、家族主義の崩壊を指摘。女性の社会進出を明るい面として評価 。第4章 開発援助の課題
国際援助（特に日本ODA）の実態を検証。インフラ偏重の持続可能性欠如を指摘し、日本援助の「上から目線」失敗事例を挙げる。援助依存の「甘え」文化を現地声から紹介。草の根レベルの教育援助を提案。増補で2010年代の援助疲労を分析 。第5章 資源開発の疑問―拡大する環境の破壊と汚染
資源大国神話を崩す章。銅・金・石炭鉱山のブームによる河川汚染・砂漠化をデータで描写。外資搾取と政府規制緩和の汚職を批判。日本企業関与事例を挙げ、「資源の呪い」（経済歪み）を論じる。持続可能開発の必要性を強調 。第6章 観光振興の疑問
観光業の成長と課題を論じる。チンギス像やゴビ砂漠の商業化・インフラ不足を指摘。観光客の文化ショック事例から、持続可能なモデルを提案。日本人観光客の「草原ロマン」偏重を戒め、地元雇用創出を重視。増補で中国客急増の負の側面を追加 。第7章 産業開発の未来
資源偏重脱却の産業政策を展望。畜産衰退をデータで示し、IT・食品加工の可能性を評価。羊毛加工や風力発電を貧困脱出策として提言。日本中小企業連携を提案。教育基盤が多角化の鍵と位置づけ、未来志向の章 。第8章 揺れるエネルギー政策―モンゴルに原発は要らない
石炭依存の環境負荷を批判し、日本主導の原発計画を反対。福島事故後の矛盾を、著者の震災報道経験で実証。風力・太陽光のポテンシャルをデータで示し、原発不要を断言。増補版の目玉で、2010年代の政策変動を反映 。第9章 ウランバートルの都市問題
首都の急成長と弊害を分析。交通渋滞・大気汚染・スラム化を描写。遊牧民流入による住宅不足・犯罪増加を論じ、日本の大都市病との類似を指摘。地方分散開発を解決策として提案 。第10章 教育立国の教育問題
識字率98%・大学進学率70%の高さを称賛しつつ、教師不足・都市偏重の質低下を分析。ジェンダー格差をデータで示し、日本の教育熱との比較を交える。批判的思考の養成を「良さ」として強調 。第11章 問われる伝統
グローバル化下の遊牧文化変容を論じる。伝統儀式の観光商品化の矛盾を批判。若者の伝統離れによるアイデンティティ危機を事例に、持続可能な継承を問う。日本人のチンギス崇拝ステレオタイプを覆す 。第12章 マス・メディアの問題
報道自由度の高さと課題（フェイクニュース・政権寄り）を検証。著者の経験から商業化・検閲残滓を暴露。日本メディアのモンゴル報道偏向を批判。デジタルメディアの台頭を展望 。全体の評価と意義本書は、モンゴルの「影」の部分を容赦なく暴きつつ、希望の光を示すバランスの取れた作品。レビューでは、日本人のモンゴル観を一新し、原発章の衝撃を指摘する声が多い。一方、データ多さで初心者にはやや難解との意見も。外交・開発関係者や旅行者に推奨され、2025年現在、気候変動や資源価格変動の文脈で再読価値が高い 。

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