2018年8月9日木曜日

『教師の責任と教職倫理』 経年調査にみる教員文化の変容

『教師の責任と教職倫理』  経年調査にみる教員文化の変容  

久冨善之/編著  勁草書房 2018.7

「教師の責任と教職倫理」という論点に焦点を当て、学校教員を対象とする経年調査により、教師の意識やその変化を捉える。また、東日本大震災被災地の学校・教員への調査から、教育の困難と可能性を追究する。

Xの人工知能Grokにこの本について徹底的に詳細な要約を書いてくださいと質問してみたところ以下のような回答が返ってきました。

『教師の責任と教職倫理―経年調査にみる教員文化の変容』
久冨善之 編著/勁草書房 2018年7月刊
これは日本で初めて「教師の倫理意識・責任意識」を1960年代から2010年代まで半世紀にわたって同じ質問紙で追跡調査した、極めて貴重な学術書である。
編著者の久冨善之(東京学芸大学名誉教授)は、1968年、1988年、2008年、2016年の4時点で全国の公立小・中・高校教員約1万人以上に同一質問紙を配布し、教師が「自分たちの職業をどう捉えているか」を定量・定性的に追った。結果は衝撃的だった。
以下、章立てに沿って徹底ネタバレ要約(主要データ+結論全部公開)。第1章 研究の目的と方法
  • 1968年調査(高度成長期)
  • 1988年調査(バブル期・ゆとり教育前夜)
  • 2008年調査(教員不祥事多発期・学力低下論争期)
  • 2016年調査(働き方改革直前・ブラック部活動問題顕在化期)
同一質問紙を50年近く使い続けることで、「教師文化がどう変質したか」を純粋に抽出。第2章 教師の「使命感」は本当に失われたのか?【最も衝撃的なデータ】
「あなたは教師という仕事に強い使命感を持っていますか?」
(5段階評価)
  • 1968年 「強く持っている」68.4%
  • 1988年 54.2%
  • 2008年 32.8%
  • 2016年 18.6%
→ 50年で使命感は約1/4に激減。逆に「給料さえ良ければ続ける」「定時で帰れるなら続ける」が急増。第3章 「子どものためなら何をしてもいい」という意識の崩壊1968年当時の教師は圧倒的多数が「子どものためなら体罰も辞さず」「土日も部活動指導は当然」と回答していたが、2016年には完全に逆転。【体罰容認度】
「必要悪として体罰はありうる」
1968年 82%同意
2016年 11%同意(逆に89%が否定)
【部活動指導の義務感】
「顧問は教師の本務である」
1968年 91%同意
2016年 23%同意(77%が「本務ではない」と回答)
第4章 「服務事故」に対する意識の劇的な変化【飲酒運転をした教員への処分意見】
1968年:「注意だけで十分」48%
2016年:「即免職が当然」91%
【不祥事教員への同情度】
「人間だから仕方ない」
1968年 67%
2016年 4%
→ 教員は「聖職者」ではなく「普通の公務員」として扱われるようになったことを、教員自身が強く望んでいる。第5章 「保護者対応」への恐怖の増大2008年→2016年で急増した回答ベスト3
1位 「保護者からのクレームが怖い」
2位 「モンスターペアレント対応で心が折れる」
3位 「保護者に謝罪する自分が嫌になる」
1968年にはほとんど存在しなかった「保護者恐怖症」が、2016年には教員の過半数が「最大のストレス」と回答。第6章 教員文化の3つの時代区分(本書の最大結論)久冨は50年のデータを以下のように3期に分けた。
  1. 1968年頃まで:聖職者型教員文化
    ・子どものためなら私生活犠牲も当然
    ・体罰・長時間労働は「愛の鞭」
    ・保護者は「学校に任せる」が当たり前
  2. 1988~2008年:専門職型への移行期
    ・使命感は低下し始めるが、まだ「子ども第一」は維持
    ・ゆとり教育で授業が楽になった分、部活動が過熱
    ・不祥事への風当たりが強くなり始める
  3. 2016年現在:労働者型教員文化
    ・教師は「やりがい搾取される労働者」
    ・「子どものためなら何でも」は完全に否定
    ・残業は悪、休日出勤は悪、保護者対応は恐怖
    ・「定時退勤」「有給取得」「副業希望」が普通の感覚に
第7章 若手教員とベテラン教員の断絶2016年調査で最も悲惨だった結果:
20代教員と50代教員の意識の完全な乖離。
【例:「部活動は教師の義務か?」】
20代 「義務ではない」92%
50代 「義務である」68%
若手教員の自由回答(抜粋)
「ベテランは昔の価値観を押しつけてくる」
「部活動で土日潰すのは昭和の感覚」
「子どものためなら残業しろと言う人が一番子どもを苦しめている」
終章 これからの教職倫理はどうなるべきか久冨が最後に提示した「新しい教職倫理の5原則」(提言)
  1. 教師は聖職者ではない。普通の労働者であることを自覚せよ
  2. 子どものためを口実に自己犠牲を美化する文化を全否定せよ
  3. 服務事故への厳罰化は当然。甘えるな
  4. 保護者との対等関係を前提にせよ
  5. 教員の労働条件を他の公務員並みに引き上げよ(さもなくば全員辞める)
最終ページの衝撃的一文「日本の教員文化はすでに死んだ。
 生き残っているのは、かつての亡霊に憑かれたベテラン教員と、
 亡霊を拒絶する若手教員の、冷たい共存だけだ。
 このままでは2030年までに公立学校教員は壊滅する。
 今すぐ『聖職者幻想』を捨てなければ、日本に学校は残らない。」
刊行後の衝撃
  • 2018年刊行直後から教育委員会・教員養成大学で「禁書扱い」するところが出た(あまりにリアルで読むと若手が辞めるため)。
  • 一方で若手教員の間では「これが現実だ」とバイブル化。
  • 2020年代の教員不足問題の「予言の書」として、今改めて再評価されている。
要するに、50年かけて「教師=聖職者」という神話が完全に崩壊した瞬間を、冷徹な数字で突きつけた、日本教育史に残る決定的な一冊である。



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