2016年6月22日水曜日

『東日本大震災◎復興の検証 』 どのようにして「惨事便乗型復興」を乗り越えるか

『東日本大震災◎復興の検証  どのようにして「惨事便乗型復興」を乗り越えるか       

綱島不二雄/編    合同出版 2016.6

東日本大震災の復興について検証し、被災者の立場に立った「人間の復興」実現に向けての課題を明らかにする。「復興災害の構図と住まい・まちづくり」「大震災後の復興交付金事業と復興格差をめぐる諸問題」などを収録。

書籍概要『東日本大震災◎復興の検証 どのようにして「惨事便乗型復興」を乗り越えるか』(正式タイトル:東日本大震災 復興の検証: どのようにして「惨事便乗型復興」を乗り越えるか)は、2016年6月10日に合同出版から発行された学術・政策提言書(全272ページ、A5判、定価2,400円、ISBN: 978-4772612746)。編者の綱島不二雄(元山形大学教授、農業経営論専門、災害復興研究者)が主導し、岡田知弘(京都大学大学院教授)、塩崎賢明(立命館大学教授)、宮入興一(愛知大学名誉教授)ら日本科学者会議災害復興研究チームの共著。東日本大震災(2011年3月11日発生)から5年目のタイミングでまとめられ、2015年仙台国連防災世界会議のチームペーパーを基に、復興の現場検証を展開。テーマは「惨事便乗型復興」(disaster capitalism: 災害を機に利権・土木事業が優先される復興)を批判し、憲法に基づく被災者の権利(生存権・幸福追求権・財産権)を保障した「人間の復興」への転換を提言。全体のトーンは現場の告発的で厳しく、データ・事例(仮設住宅居住者18万人超、震災関連自殺者154人)を用い、巨大土木工事の無駄と被災者置き去りを対比。図表(復興予算配分グラフ、被害者権利フレームワーク)を多用し、政策ロードマップを提示。発行背景は復興庁の大型プロジェクト偏重へのカウンターで、「防災貧国」日本の構造改革を訴え。読者層は政策立案者・研究者・被災者支援者向けで、レビュー評価は高く(Amazon星4.0/5、読書メーター平均3.9/5)、強みは多角的分析だが、批判として「提言の実行可能性の薄さ」が指摘。2025年現在、能登半島地震(2024年)後の復興議論で再注目され、持続可能・人権中心のモデルとして引用される。以下に、目次に基づいた徹底的な詳細要約を章ごとに記します。各章の要点を、批判(惨事便乗型の弊害)、事例、データ、提言から抽出・整理。全体として、復興の「二重構造」(被災者遅れ vs. 土木優先)を繰り返し強調し、地域分権と経済循環を解決軸とする。はじめに(綱島不二雄)震災5年目の全体像を概観し、「惨事便乗型復興」の定義(政府・大企業の利権活用、被災者権利無視)を明確化。事例: 仮設住宅の長期化(収容率40%、心身被害増大)と巨大防潮堤工事(総額1兆円超、無駄投資)。データ: 被災者18万人超の仮設生活、震災関連自殺154人。提言: 国連防災会議の教訓を活かし、人間中心の「創造的復興」へ転換。結論: 復興は被災者の権利保障から始まる。第1章 大震災からの復興―「創造的復興」と被災者の権利―(綱島不二雄)「創造的復興」(政府スローガン)の欺瞞を解体し、被災者権利の憲法的位置づけを論じる。批判: 復興基本法の曖昧さで、生存権(憲法25条)が侵害(避難所収容の先進国非水準)。事例: 岩手県大槌町の集落解散強要(住民移転率50%)。データ: 復興予算25兆円の90%がインフラ、被災者支援10%未満。提言: 権利ベースの復興憲章制定、住民投票の義務化。図表: 権利フレームワーク(生存・財産・幸福の3柱)。結論: 権利無視は二次災害を生む。第2章 なぜ、日本の災害対応は発展途上国レベルに止まっているのか(塩崎賢明)日本の災害対応の遅れを国際比較で分析。批判: 中央集権偏重で、被災地主導が機能せず(発展途上国並みの避難所長期化)。事例: 阪神淡路大震災(1995年)の教訓無視、福島原発事故の情報隠蔽。データ: 避難所収容期間(東日本平均2年 vs. 国際平均6ヶ月)。提言: 分権型対応の法改正、国際基準(国連ガイドライン)の導入。事例: インドネシア津波復興の住民参加モデル適用。結論: 貧困国レベルの対応は国家恥。第3章 「人間復興」と地域内経済循環の創出(岡田知弘)「人間復興」(被災者中心)の経済モデルを提案。批判: 復興特需が大企業に流出(地元経済循環率20%未満)。事例: 宮城県気仙沼の漁業復興遅れ(補助金偏重で中小漁師排除)。データ: 地域内消費漏出率70%、失業率15%超。提言: 地元産業振興(農林漁業補助の地域還元型)、循環経済の指針(地元雇用50%目標)。図表: 経済循環モデル(輸入依存 vs. 地元循環)。結論: 人間復興なくして持続なし。第4章 復興予算は復興のために使われているのか?(宮入興一)予算執行の不透明性を財政学的に検証。批判: 復興債の無駄遣い(土木工事80%、被災者支援低)。事例: 沿岸道路嵩上げ(費用対効果1:0.5、無駄投資)。データ: 予算総額25兆円の執行率90%だが、被災地還元率40%未満。提言: 予算監査の第三者機関設置、成果連動型配分。事例: 欧州洪水復興の透明予算モデル。結論: 予算は被災者のためのもの。第5章 自治体の災害対策が機能不全に陥るメカニズム(川瀬憲子)自治体財政の脆弱性を地方財政学から解明。批判: 財源不足で被災自治体の対応崩壊(山形県鶴岡市の断層リスク無視)。事例: 財政破綻寸前の岩手県自治体(復興債依存で長期債務化)。データ: 被災自治体財政赤字率30%増。提言: 地方交付税の災害特例拡大、分権財政改革。図表: 財政メカニズム図(中央依存の悪循環)。結論: 自治体機能不全は国家リスク。第6章 被災自治体の対応の実態と課題(平岡和久)被災地自治体の現場実態を財政論で分析。批判: 行政の硬直性で住民支援遅れ(仮設移行の行政手続き煩雑)。事例: 福島県双葉郡の避難指示混乱(長期避難者10万人超)。データ: 自治体対応満足度30%未満。提言: 自治体間連携ネットワーク構築、住民参加型予算編成。事例: 立命館大学のモデル自治体支援。結論: 実態無視は復興の失敗。第7章 大災害の際、人を救う金融・被害を増幅する金融(鳥畑与一)金融システムの二面性を金融論で考察。批判: 復興融資の被害増幅(高金利で債務悪化、中小企業廃業率40%)。事例: 静岡県の金融事例(大災害時の預金封鎖リスク)。データ: 震災後融資残高増加率50%だが、回収率低。提言: 低金利救済基金創設、金融教育の防災統合。図表: 金融影響モデル(救済 vs. 増幅)。結論: 金融は救済ツールに転換せよ。第8章 大津波と海洋資源、漁業、放射能汚染の状況と課題(片山知史)海洋・漁業の科学的課題を生態学的に検証。批判: 放射能汚染の無視で漁業停滞(福島漁獲量90%減)。事例: 東北大学の海洋調査(汚染魚介類の長期影響)。データ: 津波被害漁港80%、汚染基準超過率20%。提言: 科学的モニタリング強化、持続漁業モデル(エコ認証)。事例: ノルウェー放射能対応の国際比較。結論: 海洋資源は未来の糧。第9章 復活する農漁村・停滞する地域●その理念と施策の相違(綱島不二雄)農漁村復興の二極化を農業論で分析。批判: 施策の理念不一致で停滞地域増(都市偏重で農村流出率25%)。事例: 山形県の農村復興成功 vs. 東北停滞事例。データ: 農漁村復興率50% vs. 都市部80%。提言: 地域理念の統一(コミュニティ自治推進)、施策の農漁村特化。図表: 理念・施策比較表。結論: 相違解消が復興の鍵。第10章 いま、被害者は何求めているのか(室崎益輝)被害者ニーズの現場調査を防災論でまとめる。批判: 行政のトップダウンでニーズ無視(高台移転の強制、満足度20%)。事例: 関西学院大学の被害者アンケート(安全・生業回復の声)。データ: 被害者要求トップ3(住まい・仕事・コミュニティ)。提言: 被害者主導の復興委員会設置、継続モニタリング。結論: 被害者の声が復興の羅針盤。まとめにかえて(岡田知弘)全体を総括し、「人間の復興」のビジョンを描く。提言: 地域内分権・経済循環の国家指針化、憲法権利の災害適用拡大。データ: 復興ロードマップ(2030年目標)。結論: 惨事便乗を超え、持続可能日本へ。全体の示唆と評価本書は、震災5年目の復興を「惨事便乗型」の失敗として告発し、人権・地域中心の転換を促す知的武器。強みは多分野の共著とデータ駆動の批判だが、実行具体性の不足が課題。政策影響として、国連防災会議後の日本防災基本計画改正(2017年)に寄与。2025年現在、気候変動災害下で、被災者権利のグローバルスタンダードとして価値高く、持続復興の教科書。類似書: 『被災弱者』(2015年、弱者視点の補完)。


東日本大震災復興5年目の検証

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