「東電役員に13兆円の支払いを命ず! 」 東電株主代表訴訟判決
河合弘之/編 旬報社 2022.1
原発事業者としての義務を怠った東電役員を断罪した歴史的判決は、どのようにして勝ち取ることができたのか-。2022年7月に東京地裁商事部が言渡した東電株代訴訟の判決内容と、その意義を解説する。
- 訴訟の背景と経緯
- 第1章と第2章では、市民運動として始まったこの訴訟の目的と、裁判がどのように進められたかを解説。株主側が10年以上にわたり責任追及を続けた過程が描かれています。
- 第3章では、取締役としての安全確保義務と、事故による被害の立証に費やされた努力が詳細に記述されています。
- 争点と証拠
- 第4章では、国の地震調査研究推進本部(推本)が2002年に公表した「長期評価」や、過去の貞観津波(869年)のデータが津波対策の根拠として信頼できるかが争点として扱われました。株主側は、これらの情報を基に対策が可能だったと主張。
- 第5章「福島原発事故をめぐる東京電力物語」では、対談形式で東電の原発建設から事故に至る歴史を振り返り、事故の背景に迫ります。
- 判決の論理と結果
- 第6章では、2022年7月13日の東京地裁判決が、被告4人(勝俣、清水、武黒、武藤)の任務懈怠を認め、13兆3210億円の賠償を命じた理由を解説。裁判所は、津波の予見可能性と対策の怠慢を「著しく不合理」と断じ、「安全意識や責任感の根本的欠如」を批判しました。
- 第7章では、事故が回避可能だったかという因果関係を検討。現地視察や専門家の証言が判決に影響を与えたことが強調されています。
- 賠償額の意味と影響
- 第8章では、13兆円という前例のない賠償額が、廃炉費用、賠償金、除染費用などを反映したものであり、原発事業者の責任の重さを示すと説明。
- 第9章では、判決が東電や国の責任否定に抵抗する「橋頭堡」となり、今後の原発政策や企業統治に与える影響を河合弘之と海渡雄一のインタビューで総括しています。